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手仕事から手当てへ~京都祇園「時菜 今日萬」松茸&近江牛すき焼き

公開日: : 2018/10/05 店・料理人

牛一頭一頭を毎日触る。なでるように触る。名人になると健康状態から脂肪の付き方まで分かる。膝裏をぎゅっぎゅっと揉むように触って出荷時期を決める。繁殖農家は仔牛を産ませ肥育農家へつなぐ。肥育農家は目利きで仔牛を買いつける。出荷するまでの約30カ月を手仕事で育て上げる。

そして牛から肉へ・・

ここからが僕の仕事です。僕は19歳で肉屋に入った。当時からすき焼きの肉はスライサーで切っていた。締りのない柔らかい肉は半冷凍してスライスした。同業者でも知っている人はほとんどいないと思うけど、スライサーで肉を切る際、枝肉の右、左で切り方を変える。肉をスライサーのタンクに置くときに設置する向きを変える。これを間違うと筋肉細胞を破壊しながら高速回転でスライスするので、肉片や脂屑が壊れた細胞溝に詰まって肉質が損なわれる。あくがたくさんでる原因もこれだ。

部位ごとに真空パックされた肉を仕入れているところがほとんどなので知らなくて当然。和牛香と呼ばれる甘い香りとはほど遠く酸化した香りにさえ気が付かない。巷にあふれるすき焼き屋のほとんどはこのように機械でスライスしたものを仕入れる。わりしたの強さだけが際立って肉本来の旨みを感じない。

際コーポレーションの中島社長から昔食べたあのすき焼きが食べたい、そんな店をやりたいと相談を受けた。それなら枝肉から切り取って繊維が少し開いたところで骨を抜き、スライサーではなくお客の目の前で手切りするしかない。手切りだから機械切りより分厚くなる。それがいい!その厚みが手切りの証でありおいしさの証でもある。真空パックもしない。

僕がこの日のために選んだ肉は、但馬産近江牛。格付けはA4-BMS7。昨夜は試食会。僕がすーっすーっと包丁を振り下ろして手切りした。60gだ。中島さんも手切りした。ざくっざくっと120g。かなり厚みがあったが驚くほどうまい!

牛肉好きが全国から集まる京都。すべての店で食べたわけではないが、おいしいすき焼きと出会ったことがない。ビストロ流行の昨今、すき焼きこそ和牛の文化であり、日本の宝だと思う。驚きますよ!あまりにもおいしくて。

京都祇園「時菜 今日萬」本日開店
京都市東山区大和大路新橋東入ル元吉町51-2
電話 075 551 7337

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