日本産和牛プロモーションin台湾
昨年9月に解禁となった台湾への日本産和牛の輸出だが16年ぶりらしい。しかしだ、僕をはじめこのことを知っている畜産関係者はほとんどいないんじゃないかな。正直言って関心がない。正確には牛肉の輸出は事業なので我々のような末端小売者には関心どころか興味すらないのが本当のところだと思うのです。実際、頻繁に輸出に興味はありませんか、とかサカエヤの肉を輸出したのですが・・と言った問合わせは多い。ビックビジネスを感じさせられる話しなのだが、田舎者の僕はどうも胡散臭く感じてしまう。真剣にやっている方には申し訳ないのですが小さな商いをやっていると用心深くなってしまうのでお許しいただきたい。
さて、料理家の山脇りこさんから台湾で日本産和牛(主催:JFOOD)をレクチャーするセミナーをやってくれないかとお誘いいただいたのが7月でした。博報堂さんが昨年、今年とプロモーションを担当していて、しゃぶしゃぶをメインディッシュにコミュニケーションを行ってきたようで、今年はより現地の方々(富裕層)が日本産和牛を楽しく美味しく食べていただくために、日本産和牛の様々な食べ方の提案を現地のシェフ達としていきたいらしく、プロ(シェフや、和牛取扱店、百貨店)に向けて日本産和牛の美味しさや扱い方をレクチャーするセミナー講師をやってもらえないかということでした。
人前で話すのは得意じゃないけど、一頭の牛の肉を商品化するための技術指導もやってほしいとのことだったので、これなら僕でも役に立てるかなとお引き受けした次第なのです。とは言うものの、日々バタバタした生活の中でなんの準備もできないまま当日を迎えてしまったのです。
こちらが会場ですが読めません。
空港までは現地のPR会社「ベクトル台湾」の富山さんとジミーさんが迎えに来てくれました。驚いたことに富山さんはARDOR(沖縄北谷)の仲村さんの親戚とのこと。なんともご縁を感じる台湾初日でした。仲村さんはかなりの変人なので僕もそう思われていないか少々不安でしたが、まぁ大丈夫でしょう。僕はまともですから(笑)
右も左も分からない台湾ですが、この日の夜はりこさんと友人のカワカミさん、アシスタントの玉利さんと食事して軽く打ち合わせ。僕が捌いた肉をりこさんが料理して参加者に試食してもらうのも今回の試みの1つでもあります。
仕込みにお借りした近江牛専門店「いやさか」。残念ながら食事する時間はなかったのですが、スタッフの方がすごく良かったです。なによりも清潔感溢れていて、僕が作業していても先回りして準備してくれたり僕の仕事をじっと見つめる姿が印象的でした。
11/6:参加者からお借りしたセミナーの告知パンフ。漢字なのでだいたい分かりますがブログは部落格なんですね。
講演は30分ですが、実際は通訳が入るので15分程度でした。通訳の黄さんが日本語が達者で助かりましたが、講演資料が枚数多すぎて端折りまくりで大変(笑)
さて、講演となると何かしたくなるのが関西人の性。「ご飯食べた?」という意味を持つ「呷飽没(ジャパーボエ)?」を挨拶代わりに言ったらウケるかな?と博報堂のシンさん(台湾人で今回かなりお世話になりました)に訪ねたら、ウケるウケる大爆笑間違いなしと太鼓判を二度押された。なので自信満々に「呷飽没?!」とかましてみた。前列の1人がクスクスと苦笑いしただけだった。まさかの太鼓判。こうなると恥ずかしい。下がったテンションを上げるのが難しかった。以降の講演2回は無難に你好 (ニーハオ)でもちろん笑いもなく・・・・最初から你好にしておけばよかった。
台湾のみなさんかなり積極的!質問も多く日本産和牛への関心度が伺えます。ちなみに和牛ではなく日本産和牛と書いているのはWAGYUとの混在を避けるためです。いまや世界的に見れば和牛よりWAGYUのほうが有名かも。和牛といえば日本産ではなくオーストラリア産やアメリカ産であったり、、これが現実なのです。こんなことも知らない畜産関係者が多く(失礼)、まぁ知らなくても困るわけではありませんが世界は驚くことばかりです。
しかし、幼いころから慣れ親しみ、19歳から和牛を生活の糧としている身としては誇りとプライドを持って、和牛とWAGYUは似て非なるものだと正々堂々とやりたいわけです。どこまで伝わったかは時間の関係上難しい面ではありました。たぶん伝わっていないでしょうね。でもいいんです。そのための技術公開でありりこさんの料理であり、なによりも良い感じで終われたので来年も再来年も続けることが大事だと感じました。それよりも、質問内容から日本産和牛の情報が断片的で正確ではないということのほうが問題ではないかと思ったりしたのです。
なんかね、輸出ビジネスには興味なく、金儲けにも興味がなく、ビジネスに愛だなんだと青臭いことは言ってられないと思いますが、牛肉を生業にしている僕にとっては、やっぱりそこしかなく、今回、博報堂のシンさんに本当に良くしていただき、受けたご恩は本人ではなく台湾の志高い若者に返せればと思っています。竹屋の友人が「恩送り」という言葉を教えてくれました。まさに受けた恩をだれかに返す。お世話になったカツマタさん、現地で常に付き添ってくれたシンさん、受けた恩は台湾の若者に返します。台湾で正しい日本産和牛を販売する精肉店が誕生する日もそんなに遠くないかも知れません。本当にそんな日が来ることを願っています。
本番前の仕込が大変…ですが、さすがりこさん手際よく日本産和牛の良さを活かした料理を披露してくれました。僕もバタバタしていたので写真は撮れなかったのですが、バラとウデを捌いた端材で作ったアイリッシュシチュー、モモとロースのオイル焼きに合わせたソーズは3種類、パイナップルを煮たもの(ミント、バジル)+日本から持ち込んだ4年仕込の醤油、あと2つは、、、、忘れた。
しゃぶしゃぶは覚えてますよ。日本産和牛の旨味を感じてもらうために塩を少しパラパラと。きんかんの汁、みかんの汁、醤油、酢、昆布だし、、、だったかな(やっぱりあやふや)
セミナーでのキーワードは、「枝肉」「真空パック」「熟成肉」「保存」「酸化」「消費期限」「部位」「一頭」「研修」こんな感じだったかな。いかんせん用意したスライドはすべて使わず、3回のセミナー、すべて内容を微妙に変えたため、常に新鮮な感じはあったのですがやっぱり時間が足りなかった。それと意外と熟成に関する食いつきがよかった。台湾でもブームのようだ。しかしながら日本と同じく誤った情報で誤解している人ばかり。このあたりもしっかり伝える人がいない現状が今後の課題なのかもしれない。
いまスマホがあれば世界中で起こっていることが瞬時に知ることができます。しかしながらその情報が正しいものなのかフェイクなのかは分かりません。特に牛肉の場合は自らが出向き体験してこそ正確であり納得できるものだと思います。日本ではあらゆる分野で人手不足が深刻です。畜産の世界も同様ですが、人手不足を嘆くより、魅力のない仕事だからと捉えてみれば見えてくるものが変わります。3回のセミナーの最後に伝えさせてもらったことは「技術」です。異国の言葉を覚えるにはその国に住むことがてっとり早く確実です。日本産和牛を勉強したければ日本で短期間でもいいから働くべきです。
肉の仕事は男性オンリーではありません。これからは女性が活躍できる場でもあり、そういう形を作って行かないと新しい文化は芽生えません。
台湾における日本産和牛のプロモーションでしたが、良いことばかり話すつもりはありませんでしたし、僕が感じている良くない部分も話せたつもりです。もちろんすべてを伝える時間はありませんでしたが、それでも何かを感じていただけたのではないかと思っています。その何かに敏感に反応できた方が1人でもいてくれれば今回のプロモーションは成功だったのではないでしょうか。関係者のみなさん、駆けつけてくれた胡家雯さんはじめ台湾のみなさん、ありがとうございました。台湾が大好きになりました。
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