新生セジール第二章がはじまりました
公開日:
:
2019/11/11
SAISIR
牛の気管を四時間煮込み 牛脂を塗ったパン
9月末で村田シェフが退職したのですが、残った若者3名でいったい何ができるのか。何もできないでしょう。今年は雑誌にテレビにと露出が激しかった。その影響もあり、サカエヤ、セジールともに忙しい。ただ、セジールに関しては、予約がとりにくくなったと一部で言われていて、そうなると本末転倒、僕の意図するところとズレはじめていることになる。なので、10月は若者3名をあちこちに研修に行かせてセジールは閉める方向で考えていた。
熟成香を纏った脂。パンにバターを塗る感じで肉にどうぞ
ある日、若者3名が自分達でセジールをやりたいと言ってきた。もし、そう言ってきたらやる方向で決めていたので、予約を制限しながら営業することにした。中旬から溝口シェフが合流してきたので、11月からのメニュー作りと既存の営業と、なかなかハードな毎日だった。
豚の血のタリアッテッレ
なんとか10月を乗り越え11月。厨房の改装や仕込みなどで7日までお休みをいただき、8日にプレオープン。村田シェフの退職が決まってから引き継ぎ期間が2ヶ月と短かったため、以前より温めていた計画を前倒しにすることに。
愛農ポークのハム
僕が料理をするわけじゃないので、正直言って料理人の気持ちはわからない。僕が理不尽なことを言っても言葉はYESだが腹のなかはNOかも知れない。それはけっしていいことではない。この溝を埋めるためには、料理人のアドバイザーが必要になる。もちろん誰でもいいわけではない。諸々条件があるのだが、僕の手当てした肉を使ってくれていて、僕の考えを理解し、お互いが尊敬しあえる。できれば僕と感覚が同じような人がいれば最高だ。
ジビーフと近江牛イチボ
六本木ヒルズに店を構える、ブリアンツァの奥野シェフしか浮かばなかった。何度も足を運び、打ち合わせして、奥野シェフをアドバイザーとして、若者たちの先生役として、11月7日にプレオープン、8日からセジール第2章が幕を開けた。やはりというか、当たり前だが視点が違う。
プレオープンのメニューは以下の通り。
愛農ポークのハム
豚の頭肉とレンズ豆のテリーヌ 綺麗な味
トリッパカリカリ焼き
タルタル白トリュフ
トリュフの色気が肉によって、澄んでる。
モルツェロ
内臓の煮込み
肺とか気管、入ってないのは心臓だけ
アルサングレ
サルペッタ バンでソースを拭うこと。
豚の血のタリアッテッレ
豚のラグー
ニョッキトマトソース
レモンとセージのグラニテ
近江牛肉イチボ
ジビーフロース
クタクタほうれん草
人参
ボネ
プレオープンに出席してくださった、マッキー牧元さんの投稿から。
うらやましい。
西洋料理の人間だったら(おそらく中国料理の人も)、みなこのレストランで働く料理人のことを、うらやましく思うだろう。
なにしろ、国内で最上級の牛肉が数種類あり、最上級の豚があり、鳥がある。
いずれもこの店でしか扱ってない肉である。
健やかに育てられた、牛や豚、鳥の新鮮な内臓がある。
国内では入りにくい、豚の皮や血、屠畜仕立ての豚頭が入る。
隣は、日本一の肉屋なのだ。
脱骨し切りたての肉が料理できる。
おそらく、西洋料理の料理人にとって、これほど恵まれたレストランはないだろう。
南草津「セジール」である。
「セジール」は、一昨晩第二章を迎えた。
開店来厨房を守って来た村田シェフが、実家の熊本へ帰り、新しいシェフが就任したのである。
「州と州の州界で食べられている、文化が入り混じった料理が好きなんです」。
イタリア20州を巡って、食べ歩いたという溝口シェフは、そう言って子供のような笑顔になった。
牛のあらゆる内臓を煮込んだ、カラブリア州の「モルツェロ」も、豚の血を練り込んだタリアテッレに、豚と野菜のラグーを合わせた、トレンティーノ=アルト・アディジェ州の「アルサングレ」も、噛むごとに体に力がみなぎってくるようなたくましさを秘めながらも、どこまでも味がきれいで優しい。
それは新保さんが手当てした肉の誠実であるとともに、溝口シェフの郷土料理に対する熱情が抱き合った味なのである。
帰り際に言った。
「馬肉はないけど、鳥のトサカは容易に入るので、フィナンツェーラを今度作ってよ」。
「はい。僕も大好きです。今度いらっしゃる時までフィナンツェーラを研究しておきます。ぜひまたいらっしゃってください」。
溝口真哉シェフ37歳。
ああ、また通わなくてはいけないイタリア料理店ができた。
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