自然環境とあか牛と未来のために僕たちがいまできること
公開日:
:
2021/02/25
あか牛
あか牛は「赤身の肉」だと思っている方がいるみたいですが、おそらく名前に「あか」がついてるからでしょうね。
あか牛は赤身の肉という意味でつけられたブランド名ではなく、褐毛和種(あかげわしゅ)という品種のことで、熊本系と高知系に分かれます。僕が扱っているのは熊本系になりますが、厳密にいうと、そうでありそうじゃない、という我々関係者の複雑な気持ちがあります。
あか牛は、和牛のカテゴリーの中では絶対数は少ないですが、けっして珍しい牛ではなく、あちこちで見かけますし、育て方は黒毛和種と同じなのでサシも入りますし、格付けによって価格も左右されます。
さて、ここからが本題です。
僕が扱っているあか牛は、そもそも巷で流通しているあか牛とはまったく違うものですと、声高々と言ったところで、消費者から見ればあか牛はあか牛であり、おいしければいい。なんなら安ければなお良い。そんな感じじゃないでしょか。
こだわりは捉え方によっては自己満足であり、自分たちが思っているほど、周囲には響いていないことが多いのが現状だと感じています。
とはいうものの、それはそれとして、僕が扱うあか牛のこと、記憶の片隅にでも留めていただき、なにかのときに思い出したり、判断基準にしていただけると嬉しく思います。
まず、僕が扱っているあか牛は、他のあか牛と異なる点がいくつかあります。大きく二つ、まず牛舎で飼っていない。そして、穀物を食べさせていない。なので、草原牛と呼んでいます。
2月20日、六本木ヒルズ、ブリアンツァにて草原牛の食事会が開催されました。生産者の橋村さんと服部先生(元東海大学であか牛の功労者でもあり、いまは橋村さんと一緒に草原牛を育てています)のお手紙をマッキー牧元さんに紹介していただきました。難しい表現もありましたので、僕の言葉に置き換えてまとめてみました。
「阿蘇にこれだけ広大な草原があるのに、なぜ、草だけで牛肉が作れないのだろうか」
橋村さんが阿蘇の未来のために夢と希望を、そして残りの人生(失礼^ ^)を賭けて取り組んでいる「草原牛プロジェクト」のスタートです。
⚫︎阿蘇の牧野は22,000haあり、あか牛の放牧により牧野景観を維持したい
もしかすると、日頃食べている牛肉は、草原で草を食べて育った牛の肉だと思っている方がいらっしゃるかもしれません。しかしながら、現実は、生まれてから肉になるまでの一生を畜舎で過ごし、土に生えている青い草に舌を巻きつけて食べたことのない牛がほとんどなのです。
⚫︎草食動物であるあか牛を輸入穀物飼料でなく、本来の草で飼養する
霜降りの牛肉を生産するには、穀類を多給し、運動を抑制し、ビタミンAを制限する必要があるので、このような飼い方に誰も疑問を感じません。
⚫︎自然より与えられた阿蘇の草資源を生かした牛肉生産を目指す
橋村さん、服部先生たちは、牛が牛らしく暮らし、阿蘇の草原と牛と人が調和した景色を見たくて、阿蘇郡南小国の草原に間借りをして牛飼いを始めています。この取り組みは、きっと、次世代の子供たちに、健全な食を繋ぐために役に立ってくれると信じています。
⚫︎草食動物であるあか牛を輸入穀物飼料でなく、本来の草で飼養する
阿蘇の原野から届いた草原牛は、原野で自然分娩で生まれ、一生をススキや野芝などの生えた野草地で暮らしてきた牛です。世界的に見れば、牛肉の食文化は多様で色んな品種、飼育方法がありますが、ススキや野芝のような日本特有の草によるテロワールはきっと唯一無二のものだと思うのです。
【草原牛とその他のあか牛の違い】
⚫︎春夏期は野草地の野草を採食し、秋冬期には牧草ロールを給与している
⚫︎通常の配合飼料に含まれる成長促進剤や抗生物質は使用しない
⚫︎粗飼料中心の飼養のため、ビタミン等が豊富で脂肪色はクリーム色となる
⚫︎当然の事として、サシ志向の牛肉にはなりにくい赤み肉が基本
⚫︎周年放牧の牛は運動量が多く、筋肉質で脂肪が少なく噛みごたえあり
⚫︎一般的な飼養のあか牛は黒毛和牛とほぼ同じサシ志向で配合飼料がベースの慣行農法
僕が扱う肉にはすべて理由があります。あか牛が舎飼いなら僕は扱わなかったと思います。どんなに腕の良い生産者であっても、僕が扱う意味と答えが見つからない場合、おいしく手当てする自信がありません。橋村さんと服部先生とのお付き合いも長くなりました。僕は今年60歳、服部先生は65歳(だったかな)、橋村さんは78歳(だったような)間違ってるかも知れませんが、そんな感じの年齢です。我々がこの世にいるまでには完結しないプロジェクトであることは間違いなく、未来につながる第一歩として応援していただければ幸いです。
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