取引について僕の考え方
公開日:
:
2021/10/03
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僕は「業者」という言葉が好きではありません。飲食店に牛肉を卸しているのだから、飲食店側からすれば業者で間違いはないのですが、なぜか嫌なんです。精肉店としてのプライドなのか、僕は問屋ではないという線引きなのか、そのあたりは自分でも分からないのですが、おそらく、業者という立ち位置、立場が取引先の飲食店よりも下だと思われていることに対しての抵抗なのかも。
僕が独立した頃、精肉店だけでは食べていけず飲食店への卸もはじめたのですが、値切られるのは当たり前で、無茶な要求もされたり、散々な目にあった黒歴史があります。
ある大手の焼肉店の料理長に「◯◯(僕の他に牛肉を卸していた問屋)はクラウン買ってくれたけどおまえんとこは何買ってくれるんや」とか。
また違う店の店長からは「嫁が小料理屋はじめるので肉卸したってや。納品書はいらんで。うちに架空でつけといてや」とか。
腐ってるでしょう。
昭和の時代はこんなのばかりでした。
数年前。ワイン屋の知人と飲んでいたときのこと。共通の料理人の話になり、その方が「シェフといくら仲良くなったところで僕は業者だから」ということを言ってたのですが、正直驚きました。シェフからの信頼も厚く、業界でも有名な方だったので、その方でもそんなふうに思っているのかと。
僕は業者になりたくなくて、取引先(人)を選んできたのですが、このワイン屋さんの言葉には考えさせられました。
昨年、ショックというか寝られない日が続いた出来事がありました。
魚屋さんと天ぷら屋さんの話です。天ぷら屋さんは風呂に入るときも携帯電話を側に置いておくというのです。いつ何時に魚屋さんから電話がかかってきてもすぐにとれるように。もっと衝撃的な話もあるのですが、書いていいのかどうなのか分からないのでやめておきますが、この話を聞いて、自分に置き換えたとき、僕と料理人の関係は果たして成立しているのか。魚屋さんと天ぷら屋さんのような関係を築けているだろうか、ワイン屋さんのように業者という立場だと思われているのだろうか。しばらく寝れませんでした。
とは言っても、信頼関係を築くには年月がかかります。オーナーシェフじゃない限り、シェフが変われば仕入先が変わることは仕方がないことです。そのあたりも含めてお付き合いしないといけません。
取引をする、ということは僕にとっては友達になれるかどうか、それくらい慎重なのです。
今月の関西食文化研究会の食材レポートは「熟成肉」です。プロ向けの会ですがよろしければご一読ください。
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