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熟成肉のイメージ

公開日: : 2023/07/17 熟成肉

友人宅の食事会で、イタリアンのシェフを紹介された。友人がサカエヤ店頭で購入した肉を何度かシェフに焼いてもらったことがあるらしい。

「新保さんの熟成肉は、ナッツ香がして、おいしかったです。ブームになったとき、いろんな店で食べたけど、正直おいしくなくて、熟成肉と聞いただけで、嫌なイメージしかなかった」

はぁ、またか。

このシェフだけでなく、「サカエヤ(新保)=熟成肉」と思われてるらしく、初めてお会いした人との会話は、必ず熟成肉の話になる。最近では「サカエヤ(新保)=経産牛」のイメージも強め。なかには、サカエヤは熟成肉専門店だと思っている人もいるみたいで、こうなるとちょっとめんどくさい。

熟成肉も扱っているが、それはほんの一部で、そもそも一般の方々が思っている熟成肉と僕が実際にやってる熟成肉は、概念そのものが違う。

サカエヤのメイン牛肉は近江牛です。A3クラスでもサシが入る比率が高いので、屠畜から10日前後で使い始める。A2や経産牛など、赤身が多いものは、30日程度、枝肉の状態で吊るしておくのだが、これらすべて僕のなかでは「熟成」というカテゴリーには入らない。

ちなみに、格付けの話をすると、いまだに「A5」信者が多く(特にテレビの人)その影響で、一般の方もアルファベットと数字の組み合わせに惑わされている人が多い。「A5=おいしさ」ではない。A5でもおいしい肉もあれば、そうじゃない肉もある。A5以外でも同じこと。肝心なのは、手当てであり、保存がおいしさを作ると僕は思っている。好みはまた別の問題。

さらに、A5は珍しくもなんともなく、溢れまくっている。逆にA3やA2のほうが貴重なのだ。生産者は、わざわざ格付けの低い牛を作らないので、市場流通が少ないのは仕方のないところだが。

僕がやってる熟成肉は、温度と湿度をしっかり管理して、専用の冷蔵庫で仕上げた肉のみ。店頭で販売している100アイテムのなかで熟成肉は1〜2種類程度なのです。

レストラン向けのロースやランイチは、シェフの好みに合わせているので、30〜60日以上熟成期間を設けています。これはプロ向けであり、この場合、用いる肉は、経産牛がほとんどです。熟成させないと商品価値がないため、おいしくなる手段としての技法なのです。結果として、肉は繊維がほどけて柔らかくなり、香りも変化する。こういう肉こそ熟成肉であり、なんでもかんでも熟成させているわけではないのです。

まとめますと、価値の低い肉は、味も香りもありません。新しい価値を見出し、商品化させる手段のひとつとしての技法であり、これらすべてを僕は「手当て」と言ってます。手当てのなかには、いろんな方法があり、そのなかのひとつが熟成なのです。

イメージが一人歩きしているようですが、サカエヤは普通の肉屋ですし、僕は熟成肉を専門にしているわけでもありません。枝肉を目利きして、捌きからカット、精肉までのプロセスに職人としてプライドをもって仕事をしています。なので熟成肉を期待してご来店されるとガッカリされるかも知らないです。

サカエヤは、普通の肉屋です。でも、普通じゃない肉屋だと自負もしています。そのあたりはご来店いただき、ご自身で判断してください。

てことで、来月、冒頭のシェフの店に熟成肉(ってこれやでっ!)というのを持ち込んで焼いてもらうことになった。

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