当店の強みとは
公開日:
:
2012/04/28
雑記
先日、私としては珍しく同業者の会のようなものに参加した。
2代目や3代目の若い層が多く、私が懇意にしていた方々の姿が少なかったのが残念だった。
しかし、肉を語れない肉屋が多すぎる。
ある程度の知識はあるのだが、
その言葉からは、真剣さや情熱を感じることはなかった。
農家は牛のことを知っていてあたりまえだし、
肉屋は精肉のことを知っていてあたりまえなのだ。
しかし、このあたりまえ度数が昔と比べて低下しているように思う。
良くいえば、器用な人が多すぎるのだ。
肉以外、なんでもそれなりにできてしまうから
注意散漫になり本業がうまくいかないと嘆くのだ。
いつだったか、ある方に1分間で自分の仕事、自社の強みやミッションを
語ってくださいと言われたことがある。
結果は、1分ジャストで語ることができた。
なぜかというと、以前にも別の方から同じことを言われたことがあったからだ。
つまり、練習の成果というやつだ。
消費者のみなさんは、生産者と販売者、
つまり農家と肉屋は密接な関係にあると思われているようだが
実際は、顔も知らないというのがホントのところだ。
自分たちが販売している牛肉が、どこのだれが育てたものなのかを
知らない流通者や販売者がほとんどなのだ。
では、逆に農家の人たちはどうなのか?
じつは、自分たちが飼養した牛さんの肉がどんな味なのか
知らないまま育てている場合が多い。
もっというなら、自分たちで育てた牛さんの肉を食べたことがない農家さんがじつに多い。
2001年、BSE問題のとき、私は県内の農家を回り、
いままで知らなかった現状を知ることになった。
そして、農家の人たちに、自分たちの育てた牛さんの肉が、
消費者の方たちにどのような評価を受けているのか、どうしたらもっとおいしくなるのか、
そんなことを伝えたいと思った。
消費者が知る牛肉の情報は、一方通行のものが多く、
味そのものの楽しみ方ではなくサシによる見栄えで完結している。
「目で食べる」という表現をするのだが、10年前も今もこういった現状はあまり変わっていない。
日本の畜産は、ここ10年ほどで、格付け評価が厳しくなり、
農家のみなさんはサシを入れることに懸命になりはじめた。
必要以上にビタミンAをコントロールし、結果として不健康な牛さんの肉が市場に出回り、
サシ重視の取引が多くなっていった。
そのことを知っている畜産関係者は少ない。
特に肉屋は精肉には詳しいが、牛さんのことに関してはまったく知らない。
私は、農家のことも消費者のことも、両方知っている。
だからこそ、両者の架け橋になって、本当に健康でおいしいお肉を提供したい、
大風呂敷を広げるなら、牛肉の文化を高めることが自分に課せられた使命だと・・・
そんな大それたことを真剣に思っている。
ギフトでよく売れるのは、ロース系のサシの入った肉だ。
しかし、自分が食べるとなると、はたしてサシの入った肉を買うだろうか。
贈り物だから見栄えを重要視するのだろうが、そんなにたくさん食べられるものではない。
おそらく食べ終わった後は、しばらく牛肉は遠慮したい気分になるだろう。
別にサシの入った肉を否定しているのではない。
例えば、焼肉。1枚目はなにもつけずにそのままで。
2枚目は塩を少しつけて。3枚目は山葵と醤油で。
4枚目は大根おろしをたっぷりのせてぽんずで。
こんな風に提案すれば、何通りも楽しめるし飽きない。
硬くてぱさぱさ感なイメージが強い赤身肉だってそうだ。
ドライエイジングによる熟成肉に仕上げることによって柔らかな肉質だけではなく、
香りまで楽しめるように変貌する。
ワインや日本酒とのマリアージュも楽しみの1つだ。
牛肉には赤ワインが合うが、料理によっては白もなかなかおいしい。
私は、アルコールはそれほど強いほうではないのだが、すき焼きには日本酒を好む。
焼肉にはまずはビールを1杯、そして焼酎や時にはワインを合わせる。
クリスマスや特別な記念日に食べる牛肉、気軽にテーブルミートとしての牛肉、
いろんな体験をしてほしい。
そのためにも、販売者の私たちが肉を語れないと話にならない。
ちなみに、写真は、農家さんと当店のスタッフがBBQで意見交換しているときの1枚だ。
お買い物いただいたみなさんから寄せられる「お客様の声」も
こういった場面で披露させてもらっている。
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