「森本繁生」食卓へ
公開日:
:
2012/06/12
近江牛
2年半前、(株)こきょうの森本繁生氏が当店にやってきた。
せっかくなので、生産現場を見てもらうことにした。
お昼を一緒に食べて(もちろん牛肉)14時には木下牧場へ着く予定で
琵琶湖を左手に眺めながら湖周道路を走った。
渋滞もなく13時30分頃に到着した。
なんかいつもと感じが違う。なんというか空気が鈍よりと重く嫌な感じがした。
牛舎には、木下さんの他に後藤牧場さん、藤井牧場さん、そして獣医さんがいた。
張りつめた緊張感がピリピリと伝わってくる。いったいなにが起こっているのか?
ただならぬ状況だと判断し、遠巻きで様子を伺うことにした。
しばらくすると、いつもは笑顔の木下その美さんがひきっつた面持ちでやってきた。
どうやら、子牛が大きすぎて母牛が自力で産めない状態になっているらしい。
木下さんだけではどうすることもできずに、獣医さんと心配してご近所の農家さんが駆けつけているというわけだ。
初めてお連れした森本繁生氏だったが、まさか出産現場に立ち会うことになろうとは。頻繁に行っている私でも出くわさない出産シーン。しかも難産に出くわすとは・・・こういうのを「持っている」というのだろうか。
ほっておくと、自力で産めない母牛は、子牛もろとも死亡するケースもあるぐらいなのでこれは一大事なのだ。
子牛の頭にワイヤーをかけてひっぱりだすこと2時間、ようやくこの世に誕生したのだった。
そのときの様子を当時、森本繁生氏がブログに掲載している(→クリック)
もしやと思い、私もブログを辿ると、あったあった、書いてました!(→クリック)
その後、子牛は「森本繁生」と名付けられた。
勘違いしてほしくないのは、なにも遊びで名前をつけているわけではない。
木下さんところは、繁殖・肥育一貫農家なので、毎日のように子牛が産まれる。
現在200頭いる牛さんには、すべて名前がついている。
1頭1頭、一生懸命考えて名前をつける。これは人間の子供と同じだ。
雄は漢字、雌はひらがな表記と決まっていて、それはそのまま血統書に印字される。
木下さんは、200頭の牛さんの名前をすべて把握している。
それは、適当につけた名前ではなく、その牛さんに関わった人や出産当時の出来事に反映した名前をつけることによって、管理しやすいからだ。
私も訪問するたびに、関わりのある名前の牛さんを探したりする。
さて、先月、お肉になった「森本繁生」はそれはそれは見事な肉質で脂もさらっとしていて、購入されたお客さんからの反応も上々だ。
私も、当時を思い出しながらおいしくいただいた。
当の本人、森本繁生氏にも購入いただき、こんな感想をいただいた。
>正直、複雑な気持ちはあります。
>あの時新たに生を受けて必死に立とうとしていた牛を
>今、目の前で自分は食べようとしている。
>しかし、食べるということは命をいただくということだと
>改めて思い出させてくれました。
>感謝の念が沸いてきたところで美味しくいただきました。
>400gの肉は塩こしょうの味付けだけで
>すぐに胃袋に入っていってしまいました。
>「森本繁生」が血となり肉となり、
>明日からまた新しい自分になれそうな気がしています(^-^)
>木下牧場さん、近江牛.comさん、ありがとうございました。
「いのちをいただく」ということは、様々な考え方があって然りだが私は、生産者にも消費者にも近い立場にいる。だかrというわけではないが、両方の気持ちがよくわかる。
一般的な肉屋は、問屋から肉の塊を仕入れて、精肉にするわけだが当店の場合は、生産者と一緒になって牛を飼い、ときには出荷に立ち会い自分の手で精肉にしていく。
肉のひとかけらも無駄にすることなく、「おいしいね」といっていただくところまで責任を持てるような仕事をしていきたい。出産に立ち会うといつも身が引き締まるのだ。
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