安心・安全・おいしい+健康
公開日:
:
2012/06/28
雑記
Facebookの近江牛.comファンページに投稿した記事です。
(少し文章を補足してます)
写真は、プレミア近江牛の枝肉、屠畜から4日目です。
生産者の木下その美さん、思っていた以上の仕上がりにVサイン!
私が幼いころ、両親が夜遅くまで働いていたため
晩ごはんはいつも隣のおばちゃん家。
おばちゃんとこのおっちゃん(旦那さん)が畜産関係の仕事をしていたこともあり、
毎日のように「すき焼き」だった。
すき焼きとオレンジジュースが私の晩ごはんだった。
たまに、おっちゃんが私にビールを飲ませておもしろがってたのを思い出す。
毎日すき焼きはなんぼなんでも大袈裟やろ!て思うかも知れないが
これがほんまなんです。
このおっちゃん、私にとってはええおっちゃんだったのですが
近所では変わり者で有名でした。
なんといっても朝5時に起きて、すき焼き食べるような変人ですからね。
亡くなる2年前(亡くなったのは90歳)まで肉肉しい生活だったようです。
おっちゃんの作るすき焼きは、肉を焼いて砂糖と醤油で味付けして、
あとはネギを入れるぐらという簡単なものでした。
さすがに、おばちゃんとおねえちゃん(私より10歳上)は、
時々違うものを食べていた。
いま思えば、このとき食べたすき焼きの味が、大人になってからの
私の咆哮に大きく関わっているように思う。
幼い私は言われるままに食べたとしても、おっちゃんはよくもまぁ、
毎日肉ばかり食べられたものだと感心する。
つまりは、おいしかったのだろう。
この時代の近江牛といえば、但馬の血統のものが多かった。
昭和48年を例にとると、この年の出荷数は1,938頭で素牛の内訳は、
兵庫が824、京都が230、宮崎が525、長崎が185、滋賀県内が118、その他が56となっている。
飼料もいまとは随分違っていたことは安易に想像がつく。
実際に、滋賀県畜産技術センターにおいて、当時の近江牛を再現しようと実験している。
私も昨年1頭買わせてもらったが、肉質は良かったのだが脂質がイマイチだった。
さて、当時の肥育はいまとは違い、無理やりサシを入れることもせず、
自然のままにストレスフリー飼養していた。
サシを入れる技術(ビタミンコントロール)を知らなかったということもある。
但馬の血統は、枝重も300kg台と小さく、特徴として肉質はやわらかく、
脂は真っ白ではなくややクリーム色で、なんといっても香りが良い。
私なんか肉屋のにおいとして幼いころから衣服に染みついていた。
あまり好きなにおいではなかったが・・・。
いまは、衛生的になりすぎて(もちろんいいことだが)肉屋のにおいがしない
肉屋ばかりで少し寂しい気もする。
現在の畜産事情は、牛はいまや人間の都合に左右される経済動物で、
輸入ものの穀物飼料をたっぷり与えて、大きくなるように改良され、
無理やりサシを入れて、結果、牛にも人にもかなりの負担がかかっている。
生産者は、小ぶり(枝重が小さい)でサシが少なくても、高値で売れれば採算がとれるのだが、
格付け評価が低ければ、安価で取引され経営に支障をきたすことになる。
だから、できるだけ大きくなるように仕上げてサシを入れるわけだが、
牛にかなり無理をさせてしまうことになる。これを理解している人は少ない。
生産者にはわからないだろうが、そうやって育った牛の肉は、
精肉にしたときによくわかる。
7月19日にきたやま南山において、エコフィードで育てたプレミア近江牛の
お披露目会が開催される(→クリック)
写真ではわかりにくいが、肉質がキメ細かく、脂の色も少し黄色くて、
まさに私が幼いころに見た、触れた、そして毎晩のように食べた牛肉そのものだ。
まだ食べていたいので味については語れないのだが、
枝重350kgと小さめで、国産飼料で育てたため最終引き取り価格は、
チャンピオン牛と同等の価格となった。
通常なら、生産者はこんな採算の合わない飼育はぜったいにしない。
今回は、当店ときたやま南山さんがしっかり支えていくことで実現した、
いわば夢のプロジェクトなのだ。
私たちのこういった取り組みは、2010年フードアクションニッポンアワード
プロダクト部門において優秀賞を受賞した。
私は、これからの時代は、安心、安全、おいしい+「健康」がキーワードだと考える。
おいしいといってもそれは十人十色。
なにをもっておいしいと言うのか、このプレミアムな近江牛を、
通常肥育の近江牛(穀物肥育)と比較して、成分分析+食味検査もすることにした。
しかも、今回は岩手県の岩泉町で育った、自給粗飼料育ちのプレミアム短角牛と、
通常肥育(穀物肥育)の短角牛も検査して比較することになった。
なんと屠畜日をそろえる念の入れよう。
近江牛に限っては、プレミア近江牛も通常の近江牛も格付けがA-5だった。
これは偶然なのか必然なのか、はたまた神様のプレゼントなのか、
私からすれば、プレミア近江牛はサイレージ中心なのでA-2ぐらいだと思ってたので
まさに奇跡なのだ。
これら4種類の肉を熟成度別に2週間、1ヵ月、ドライエージングによる40日熟成と、
3段階で食味検査(官能検査)し、脂肪酸やアミノ酸の変化を追う作業に入る。
私たちだけでは当然できないので、京都府立大学の佐藤先生、松井先生、朴先生、
そして学生さんたちにお手伝いいただくことになった。
本格的な食味検査+成分分析をすることで、おいしさを数値化し、
感覚だけではなく理由のあるおいしさを追求していきたい。
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