正体の見えない割安な肉と顔の見える安全な肉
公開日:
:
2012/11/25
雑記
近江牛が入荷すると販売前に試食するのだが、ほとんどの場合はステーキか焼肉で、
炒めたり煮たりすることはほとんどない。
しかし、これからの時期はすき焼き肉がよく売れるということもあり、昨日は簡単な具材も用意して
すき焼きで試食してみた。
赤身のウデ肉から特に硬そうな部分を選んでの試食だったが抜群においしかった。
サシの多い肉のような「とろけ感」はなかったものの胃もたれしないキレのある味わいは
普段飲まないビールが欲しくなるほど秀逸な味だった。
ところで、外食の多い私だが、ついつい気になるのが日本中どこで食べても「牛肉」だ。
私が幼いころは、牛肉といえば「ハレの日」の食べ物で、滅多なことでは口にすることができなかった。
正月に家族ですき焼きを食べるぐらいで、現在のように牛丼屋もなければコンビニもない時代だ。
私が外食でぜったいに行かない店がある。
誘われることもないが割安感を前面に出した食べ放題の焼肉だ。
10年ほど前は食べ放題の焼肉チェーンが人気を集めたのだが、
2001年の牛海綿状脳症(BSE)問題で、消費者の食肉に対する安全が高まったのをきっかけに
淘汰されていった。
しかし、先の見えない不景気に加えて牛肉のユッケ事件やレバ刺し問題などで消費が低迷すると
ふたたび食べ放題にシフトする店をちらほらと見かけるようになった。
単品よりもこのほうが割安感があるのだろう。
しかし「企業努力で安く」を謳い文句にしている店をよく見かけるが、
牛肉の背景がまったく見えず、産地すら不確かな場面に出くわすこともある。
米国産や豪州産と明記していればまだ良いほうで、アルバイトスタッフに聞いても
答えられないといったことも少なくない。
食べ放題の店にそこまでの接客レベルを求めるのは無茶なのかも知れないが、
消費者が求める安全、安心と実際の行動には「価格」という障壁による隔たりを
感じずにはいられない。
なにか問題や事件が起これば、また立ち止まるのだろうが、一方では「顔の見える食材」を売りにしたい
飲食店が増えてきているのも事実だ。
「本物志向」という言葉を一時よく耳にしたが、一部の飲食店では生産者や産地との良好な関係を
継続して高くても信頼のできる安全な食材を使い続けている。
そこに消費者が共感し熱烈なファンとなり末端からバックアップできている仕組みが自然と作られている。
昨夜は、大阪マラソン前夜ということもあり、賑わいの大阪の夜を満喫したのだが2極化している
飲食店に感動したり呆れたりと忙しい夜だった。
さて、数か月前にきたやま南山さんで開催した「やまけんが育てた短角牛」のイベントで同席した
葉山の山口さんとモモ肉のドライエージング話で盛り上がり、じゃー試しにやってみますかと勢いと
その場のノリで引き受けた熟成肉が27日で40日を迎え解禁となる。
山口さんがお店で使うためには近江牛では価格的に合わないとのことなので、鹿児島県産の黒毛和牛で
しかも肉質が硬い経産牛を選ばせてもらった。
もともと赤身の多い硬い肉をいかにしておいしく食べさせるかということで初めたドライエージング
だったので、そういう意味ではドンピシャな肉をチョイスしたということになる。
仕上がりが良かったらサイトでも特例として販売する予定なので、興味のある方は楽しみにしていてください。
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