「安売り」と「お値打ち」の違い
年末年始は、お肉がよく売れるので端材も結構な量ができてしまいます。
枝肉から捌いて部位別に小割りしたときに、端材になりそうな部分だけとってしまって、先に切り落としで12月中に販売してしまうという手もあるのですが、昨年末は仕入れのタイミングが年末ギリギリになってしまって、昨日から店舗で切り落としのセールをしています。
しかし、さすが正月です。高価な肉しか売れません。
いくら安くても無用なものはいらないということか。
悲しいかな普段の日なら飛ぶように売れるというのに・・・。
それならばと、社員、アルバイト全員に1.0kgづつ持って帰ってもらおうやないかということになり、私も昨夜は切り落としですき焼きを堪能した次第です。
切り落としは、カタロースやウデ、モモ肉の端材が混ざっているので、いろんな部位の味が楽しめる、見方を変えればすごく贅沢な商品なのです。
炊いても煮ても、自分でスライスした肉は、口の中に入れただけでどの部位のどの部分なのかわかってしまう。柔らかい肉があったり歯ごたえがある肉があったりと、気が付けばノートにメモする始末。しっかり仕事モードだ。
溶き卵に少しつけて、はふっ。
熱々の肉を冷たい卵につけるとうまく混ざってちょうどええ塩梅になる。
まずは大きめの肉を1枚口の中に放り込むと、すうっと溶けていく。
これはリブロースの断面だ。外気に触れている部分なので少し変色している。
食べてなんの問題もないのだが、変色はクレームにつながる可能性があるので、
いつも自分消費なのだ。
まだ口の中に残っているというのに、待ちきれずにもう1枚。
少し歯ごたえがある。これはウデの切り出し部分で私的にはこれぐらいの食感がちょうどいい。
ちなみに「卵の庄」畠中さんの烏骨鶏の卵が肉によく合って抜群においしかった。
さて、個人的にはバーゲン大好きなんだが、当店では理由なき安売りは今後もやらない方向だ。今回の切り落としのような特例はあるが、それでも本当は安売りはやるべきではないと思っている。ここが賞味期限のある腐りものを扱っている痛いところなのだが・・・。
当店の実店舗は、ロードサイドということもありお客様の大半は目的買いで来店される。
つまり常連客が多いわけだ。安売りで買った肉を元の値段で買わなければならないお客様は間違いなく損した気分になるはずだ。恐らく、切り落としを買いにきても商品を目の前にして購入を躊躇してしまうだろう。
いくらこの商品はこんなに価値があると謳ったところで、ほとんどの消費者が購入の決め手とするのは「価格」だ。だからこそ、当店では「価値」が「価格」を上回る商品を常に提供し続けなければ逆に店の信頼感を損なってしまう。「安売り価格」ではなく「お値打ち価格」でなければいけないのだ。
当店の取り組みを消費者の方に理解していただくことは本当に難しいことを実感しています。
理解はしていただいても、いざ購入となれば安価なほうへ安価なほうへと流れていくのが現状です。もちろん、そうではない方々がリピーターとして当店を、そして後ろにいる生産者の方々を支えてくださっているのもまた現状です。
インターネットの商圏は世界です。牛肉だけに括ってしまえば日本ということになるのだが、そこには近江牛のショップのみならず、松阪牛や神戸牛をはじめとする銘柄牛、さらに国産牛や輸入牛肉まで合わせると、まさに星の数ほどのネットショップが存在するわけです。
例えば、近江牛1つとっても、当店で販売している近江牛は、飼料をすべて国産にこだわっています。生産者も動画で紹介したり冊子で案内したりトレーサビリティも明確にしています。生産者との取り組みは農水省のフード・アクション・ニッポンアワードにおいて優秀賞を受賞しました。・・・・・・どうですか?!他の近江牛のショップとこだわりが違うでしょう!
といったところで、実際にサイトを見て、肉を食べて、その差を見抜ける消費者なんていなくて当然なんです。へたすれば「こだわり」は自己満足に終わってしまう可能性さえあります。
少しマイナス的な発言に聞こえるかもしれませんが、だからこそ注意深く肝に銘じて取り組んでいるのです。現状に満足する「こだわり」なんて1つもありません。
脱皮を繰り返して成長していかなければ当店のような小さな企業はすぐに忘れ去られてしまいます。
価格の話から横道にそれましたが、実店舗で販売している切り落としは、ネットで販売しているものとは少し異なる。ネットで販売している切り落としは、すき焼き用の肉をそのまま使っているのだが、店舗で販売しているものは別名、「小間切れ」といい、すき焼きや焼肉にカットした端材を合わせてスライスしたものなのです。乱暴な言い方をすれば、「クズ肉を寄せ集めてスライスしたもの」ということになる。
見栄えは良くないが味は抜群なので、私なんかはこの肉ですき焼きや牛丼、カレーライスを作るのだが、マジでうまい。
正月の話ではないのだが、こういうおもしろいことがあるので紹介したい。
切り落としは普段100g398円で販売しているのだが、年に2回の感謝祭では「100g398円→298円」で販売する。すると飛ぶように売れる。さらに「398円→198円」にするとどうなるかと実験したのだが、売れなくなった。
ということは、当店の切り落としの「お得感」は「298円」ということになる。お客様はその値段に価値を見出してくれているということだ。198円は手間と労力、もしかすると信頼をなくす価格なのかも知れない。切り落としはもともと利益はゼロだが、利益が取れる商品であれば、198円は手間をかけて利益を減らす商品ということになる。
安売りは滅多にしない当店だが、そこの「価値」を見出していただけるような商品を販売し続けたい。
さて、安売りはしたくないけど、たまにはいいかな。
もちろん会員様限定で、、、今年はそんなことも考えています。
あと、ネットのお客様との交流もイベント絡みでやります。
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