安全性の追求と赤身肉
本日より販売を開始した国産牛熟成肉(モモ肉)のステーキだが、10時に配信したメルマガをご覧いただき、まずは常連のお客様よりたくさんのご注文をいただきました。メルマガ配信先は、当店でお買い物されたお客様が大半なので、新規のお客様がご購入されるケースは大きなPRをしないので少ないだろうなぁ、なんて思っています。
馴染みのない熟成肉で、しかも肉質が硬い経産やF1のモモ肉をドライエージングしたものなので、私の取り組みや熟成肉のことを少なからずご存じの方にご購入いただき、評価していただければと思います。
私のデスクの隣が受注担当者のデスクなので、少し文字打ちを小休止してメルマガ配信後の注文状況を確認したところ、「国産牛熟成肉(モモ肉)のステーキ」をご注文いただいているお客様は友人知人、そして赤身好きなリピーターのみなさまで占めていました。
「類は友を呼ぶ」という言葉がありますが、私が赤身好きなので、どうしても肉質等級にこだわらず赤身のおいしい牛肉を目利きし、さらに特別意識しているわけではないのですが、霜降り肉よりもやや赤身肉に偏ったテキストを書いたりしてしまいます。
すると、年々こんな傾向が強くなってきているのです。
当店にはサシのある肉を敬遠される方や、牛肉そのものが苦手な方、安全性を気にされている方など、私の考えに似た(共感)方がお客様としてしっかり当店を支えてくれるようになりました。
そして、お客様と電話でお話したり、イベントでお会いしたりすると、すごく感謝されることが多いのです。ご購入いただいてお礼を言われると、もちろん冥利に尽きるのですが至極恐縮です。
クチコミでのご紹介も多く、「良質のあるお客様は、良質のあるお客様を連れてきてくれる」ということを最近特に感じるような出来事が多くあります。
好きな部位だけ問屋さんから仕入れるのではなく、一頭すべて買い取る形で仕入れているので、ロース系には少なからずサシが入ります。
※サシが入った部位でも、あっさりとした食感が楽しめるように、飼料を厳選して、特に生産者には酷な話だがA5を作らずにA3を目指してほしいと無理難題をお願いしています。
和牛はサシが入ってこそ評価の対象であり、高値で取引されるのですが、サシは血統によるところが非常に大きく、さらに乱暴な言い方をすれば、ビタミンコントロールによる意図的な行為が肉牛の世界では蔓延しているのです。
少し専門的な話をしますと、私は肉屋であり畜産農家ではないので、このような話は本来は知らないのですが、木下牧場さんや獣医さんと懇意にさせていただくうちに、自然と身についたというか、いままで数多くの牛舎を見て回って、「あぁ~、あのとき獣医の先生が言ってたことはこういうことか!」と実際の現場での疑問などが蓄積した知識となり、私をより安全な牛肉販売へと導いていったのだと思います。安全性を追求すればするほど経営が苦しくなるのですが(泣)
数年前、瞳孔が開いていたり起立することさえ困難な牛たちを実際にいくつかの牛舎で見ることがありました。最初は分からなかったのだが、私自身が生産者の方々と対等に話をするにはある程度の知識が必要だと思い、それなりに勉強した結果、肉屋の私でも異変に気付くようになったのです。
肉屋は精肉のプロであっても生きた牛のことはまったく分からないのが普通です。逆に生産者は牛を育てるプロではあるが、精肉に関してはほぼ素人なのです。
最近では、料理人のほうが詳しかったりします。
畜産の世界でよく耳にする「ビタミンA欠乏症」がなぜ起こるのかというと、サシを入れるために肥育段階でビタミンAの給与制限をするわけです。これをビタミンAコントロールといいます。
このタイミングを見誤ると血液中のビタミンA濃度が下がりすぎて、食欲低下となり肝臓や筋肉にダメージが残り、ひどい場合は瞳孔が開いたり起立できなくなるのです。結果、枝肉にありがたくない瑕疵(かし)が見つかることもあるのです。
瑕疵の中でも、シコリ(筋炎)は、筋肉系のシコリと脂肪系のシコリがあり、セリ前の枝肉の目利きでロースのカブリにみられる脂肪系のシコリは、BMS13とか言って生産者を冷やかしたりする。このあたりは分かる人には分かるというマニアックな話です。
これ以上は、さらにマニアックな極みになってしまいそうなのでまたおいおいということで。
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