お腹を満たす時代から舌で楽しむ時代、そして頭で楽しむ時代へ
写真はサルティンボッカで焼いてもらったリブロースの熟成肉だ。
サーロインと違ってカブリのところに脂がかんでしまうので、取り除けばこのような歪な形になってしまう。ただドライエージングさせているので、さらっとした脂に仕上がっていることを考えると、ある程度付けたままでも良いのかも知れない。
昨夜は、今年6月8日、9日に琵琶湖沿いのホテルを借り切って開催予定のECサミット(仮)の会議だった。本番ではECは名称として残さない意向で、インターネットを活用して商売を始めた1990年代の中盤あたりから様々な形に変貌を遂げ現在と未来を見据えたイベントを想定している。
インターネットに頼った商売からその在り方を考えるような内容で2日間を組み立て、200名の参加者を予定している。ネットとリアルの垣根がなくなりつつある現状を、さまざまな業種の講師陣に独特の目線と哲学で語ってもらう。
すでに数名の講師が決定しているが、滅多なことでは聞くことのできないあの人やこの人にお話しいただく。
募集はもう少し先になりそうだが(ページ作成中につき)、6月8日、9日はぜひ滋賀にお越しください。
2013年の後半戦に必ず有意義な内容となることをお約束させていただきます。
ところで、インターネットのおかげというか、時代のスピードに付いていくのにアナログな私は必死であるが、食の世界も時代を経て大きく様変わりしている。
私が幼いころは、現在のようにモノが溢れておらず、毎日同じようなものばかり食べていたように思う。とりあえずは胃袋を満たせば満足するような感じだ。
いまでこそラーメン店は珍しくもなんともないが、私が小学生の頃、車で15分ぐらい走ったところにサッポロラーメンができた。毎週末になると父に連れらてラーメンを食べに行くのが行事のようになっていた。
毎週ラーメンを食べるということは、当時にとっては非常に贅沢であり、学校で自慢すると友達が羨ましがっていたものだ。いまでは考えられないが・・・
けっしてラーメンが好きと言うわけではなかった。非日常的な食べ物を食べているという優越感に似たものが父にあったのかも知れない。私には、味がイマイチ分からなかったので、味わうというより短時間でお腹が膨れる食べ物という印象が強かったように思う。
成人して肉の業界に足を踏み入れたころは、いまのように霜降り肉がもてはやされていることはなく、むしろ、牛肉ならなんでもおいしいような時代だった。
輸入牛肉もなく、私の周りには近江牛しかなかったので、いま思えばラーメン以上に贅沢このうえない話である。
真空技術が導入され、便利さと引き換えに「味のない」牛肉が多くなっていった。そして、流通が発達し、ネットを使って全国からそこへ行かなくても食材を取り寄せることが可能となり「舌で味わう」時代へと突入していったのだ。
ただ、牛肉の世界は霜降り肉がマスメディアに持てはやされ、「舌で味わう」というよりもまず目で味わってから舌で味わうという2段階を踏んでいるように感じる。
そして現在、特に震災以降は「頭で味わう」もしくは「頭で楽しむ」という時代に入った。
これとよく似たことが小阪祐司さんの【「心の時代」にモノを売る方法】に書かれている。
「頭で味わう時代」は、まさしく、どこでだれがどのようにして育てたのか、ということであり、私たちの取り組みでもある「エサ」に関しても、輸入飼料に頼らざるおえない現状日本の畜産とは真逆の国産飼料へのチャレンジを支援してくれる人たちが増え始めている。
国産飼料を与えたからといって肉がおいしくなるのかと言えば、ハッキリいってそんなことはない。逆に価格が高くなって扱いにくくなるだけだ。。しかし、安全性を深堀して考えている消費者、料理人、農家のみなさんによって様々な面(価格も含めて)で支えていただいている。
先日のNHK「うまいッ!」をご覧になった農家の方が、取り組みや考え方に共感されて、振るい落とされたお米(ユルゴ)を持ってきてくれたりと、新しい縁も広がっている。
そもそも国産飼料を集めるのは大変なのだ。
しかし、安全性を追求すればするほど経営が苦しくなるのは今の日本を象徴しているようにも思えるのだが。
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