経産牛の熟成ウチヒラは赤身好きにはたまらない味だった
当店は、近江牛専門店という看板を掲げているので、近江牛が主力商品なわけだが、業務用卸部門では、近江牛に限らず様々な食肉を取り扱っている。
要望があれば、ダチョウのタマゴからワニの肉まで仕入れることもある。
ドライエージングビーフ(熟成肉)に関しては、いろいろな牛肉で試してきたが、近江牛のA3以下の、いわゆる市場評価の低い牛肉が向いていることは何度も書いてきた。
ホルスタインや短角牛でも試みたが、それなりには仕上がるのだが、近江牛を熟成したものと比べると大きく差がでてしまうのだ。
当初は、一般向けにサイトで販売していたのだが、購入者をみるとどうも飲食関係者が多く、実際に業務用価格でなんとか安くならないかと言った問い合わせも増えてきた。
500gや1.0kgで業務用価格を求める方は論外として、ロース1本単位で購入希望の方にはかなり割引して販売させていただいている。
それでも、5坪あたりの小さなお店でロース1本は回転させられない、もっと安価で熟成肉がないものかと言った問い合わせも結構あったりして、それならばと今回のように経産牛やF1(交雑種)を熟成させてみたのだ。
経産牛は何度も熟成させている経験があるのでまったく心配も不安もなかったのだが、よく考えると、いままではロースのみで、ステッキ(骨付きのモモ肉)をまるまる熟成させるのは初めてなのだ。
モモ肉は、マル、ランプ、ウチヒラ、ソトヒラの4部位に分かれ、一番心配なのが肉質が硬いソトヒラなんです。熟成によりある程度は柔らかくなっているとは思うのだが、それでも経産の硬さは相当なもので、それをステーキで販売するとなると大きな賭けになる。
マル、ランプ、ウチヒラは、ネットで販売したところ一晩で完売してしまった。発送の早い方からランプ、ウチヒラ、マルの順で予定している。ランプとウチヒラはすでに発送完了しているのだが、昨夜、私がカットミスした2枚のウチヒラを焼いてみた。
ちなみに、心配だったソトヒラは、駒沢のイルジョット高橋シェフの手により、すばらしく美味に料理してくださった。今後もイルジョットで近江牛の熟成肉と経産牛のソトヒラは食べることができるので、ぜひお近くの方はお出かけください。
家焼きの2枚だが、まずは2枚ともフライパンで焦げ目をつけてから皿に移して10分程度休ませた。休ませるのは、肉汁を肉全体にまわしてジューシーに仕上げるためだ。
ちょうど2枚なので、1枚はフライパンで、もう1枚はオーブンで試してみた。
まず、フライパンだが強火で一気に火入れしてみた(パリで肉焼き7年の茂野シェフの真似)のだが見事に失敗。
肉はパサパサ、モサモサで硬くて熟成香もどこへやら・・・
おそらく火を入れすぎたのが原因だと思う。
次にオーブンだが、100度で30分に設定。
こちらは大成功
ほどよく柔らかく、熟成香も強くはないもののしっかりと確認できるし、なんといっても300g食べた後でもお腹がでない(笑)
焼くときは塩はせずに、焼き上げた後に塩をふり、レモンを絞ってそのままで、マスタードを少しつけるとまた違った味に。さらにバルサミコ酢(写真の手前)がよく合います。
残りは「マル」のみとなったが、肉質的にはウチヒラと変わらないので、焼き方さえ私のように間違わなければおいしく仕上がると思います。
同時期に熟成させたF1だが、こちらは私が試食する間もなく、ウチヒラ、マルの2本が名古屋のステーキレストランへ嫁いでいった。
ランプは、今月14日に神奈川の葉山にあるクック&ダインへ嫁いでいく。
私も娘が心配なので嫁ぎ先まで付いていくのだが、いまからドキドキだ。
・・・この記事を書いていてふと気づいてしまったのだが、F1のソトヒラの嫁ぎ先が決まっていない。
さて、どうしたものか。
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