消費者の欲求は変化していくもの
公開日:
:
2013/02/19
雑記
愛農ナチュラルポークのイベントが3月4日(徳島)、3月20日(東京)開催されることになった。徳島は取り組みに共感していただいた有志の方々によって実現の運びとなり、3月20日の東京は、「肉Meets」として、私の友人知人を招待しての開催となるので一般募集はしない予定だ。
じつは、思い立ったらその場で決めてしまう良くも悪くも困った性格なので、出荷のあるなしも確認せずにイベントの日程を先に決めてしまった。案の定というか、愛農ナチュラルポークの出荷が3月はなしとの連絡。さて困ったぞと腕組みしたもののないものはない。
徳島のイベントは延期はできないとのこと、東京も友人に声をかけていることもあり日程変更はむずかしい。
で、どうしたかと言うと、愛農ナチュラルポークの屠畜場所は、三重県松阪。さすがに松阪まで引き取りにいくのは大変なので、愛農高校の川上先生に引き取りにいってもらい、私が愛農高校で受け取り枝肉(骨付き)のまま持ち帰って保存しようということにしたのだ。
いつもは、松阪で骨を抜いてもらって部位別で送ってもらっているのだが、骨を抜いてしまうと日持ちしないので、熟成させようという算段なのだ。真空パックや冷凍での保存も考えたが、それでは味が落ちてしまう。
徳島は日が迫っているので、来週あたりから脱骨して送り始めるのだが、問題は東京開催分だ。
さすがに1カ月間の保存は枝肉でも厳しいため、モモ、ロース、バラを骨付きのまま開催場所となるレストランへ送って熟成させてもらうことにした。実は、このレストランのシェフは以前より豚を熟成させていて、私も何度も食べているので信頼して任せられるのだ。
ところで、ついに熟成肉がブームになってしまった。
昨日も今朝も、たまたまつけたテレビで熟成肉が特集されていた。
そのせいなのか、問い合わせもここ2~3日で通常の倍近くあり、断るのに大変なのだ。
もちろん、すべて断っているわけではない。
話をお聞きしたうえで特に「誤解」されている方のみお断りさせていただいている。
なんかこんなことを言うと、上から目線のように思われそうだが、なんでもかんでもブームに飛びついて、わけも分からないのに売りたいという方が多いのだ。
ロース1本仕入れたいから見積もりが欲しいとか、いきなり、いくらになる?とか、仕入れてやる的な横柄な方もたまにいたりする。私が危惧するのは、安易にブームに乗っかって熟成肉を販売してしまうとユッケ事件の二の舞になりかねないということだ。
それほど熟成肉は、繊細で取り扱いがむずかしく、知識と経験が必要なのだ。
実際に、あるレストランのシェフが熟成に挑戦したので見てほしいと言われて、見に行ったら腐敗していた。なんてことが過去にあったのだ。
愛農ナチュラルポークも同様で、引きが強い商品なので「誤解」が多い。
つまりこういうことだ。
ストーリーや物語、背景を付け加えれば売れると誤解しているのだ。
ネットショップではありがちだが、ストーリーや背景は捏造(ねつぞう)しやすい。
例えばこのページ(→クリック)は、流通経路の背景を表したものだが、いまやたくさんの同業他社のサイトで真似を見かける。
真似されることに対しては、別になにも思わないし、事実であれば共有してもらっても大いに結構だ。ただ、テキストや写真は困る。
牛肉にそこそこ詳しければ分かることだが、実際のところ、こういった図式は日本の畜産では非常に珍しく、成り立ちにくい構造がある。生産者は牛を育てるのが仕事なので出荷したらお役御免、問屋はそれを買い肉屋に売る。肉屋は精肉にして消費者に売る。消費者は食べておしまい。少し乱暴に書いてしまったが、これが本当のところなのだ。
ところが、セミナーやマーケティングの本、コンサルの先生方が「モノを売らずにコトを売れ」と言うものだから、なんでもかんでも背景をつけたがる。スーツ姿で生産者と握手している写真なんかを堂々とサイトに載せて物語を作ろうとする。
しかし、ここ最近、こういうことが通じなくなってきているように思う。
捏造した物語は薄っぺらく語りがあまい。サイトを読み込めばすぐに分かることだが、本当か嘘かがすぐにわかってしまう。それぐらいお客さんがサイトに入り込んでモノを買うようになってきている。
ブームになっている熟成肉も、いまは消費者の知識が追いついていないが、メディアがまともな伝え方をすれば大きな間違いも起こらないだろう。そう願いたいのだが実際はむずかしいだろう。
O2O「Online to Offline」が注目されているが、当店でも店頭で確認してホームページから購入するお客さんが存在する。穿った見方をすれば、サイトに書いてることは本当なのか店舗で確認をしてから購入に至っているのかも知れない。
そんな邪魔くさいことを・・・
と思うかも知れないが、それぐらい消費者の欲求は変化しており、店側がそこに気付いていない現状が損失に繋がっていると私は真剣に思っている。
いつだったか、モールに出店している数名の方から、なんにもしていないのに調子がいい、という話を聞く機会があった。つまり広告も出していないし更新もしていない、それなのに売り上げがあがっている。ということなのだが、逆に、広告をバンバン出している複数の店舗から、売り上げが思うように伸びないといった話を聞いたことがある。
モールのお客さんは、とにかく安さを求めているイメージが強かったが、どうやらそのあたりも変化してきているようだ。
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