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プライオリティ(優先順位)を考える

公開日: : 2013/03/02 雑記

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昨夜は帰宅が遅かったこともあり、深夜の肉焼きレッスンとなった。
あいかわらず調子の悪いテレビは、録画が始まると勝手にスイッチONになり、私の都合などおかまいなしに強制的にテレビがついてしまう。

テレビでは、BBCびわ湖放送「びわカン」の特番がはじまっていた。滋賀に物申すと題して、若手経営者が集い、原発問題や交通、観光などテーマごとに専門分野の方々がパネラーとして各々の想いや考え方などを物申していた。

食に関しては、飲食関係の方々がパネラーとして登場し、なかでも滋賀の食材を生産者と共に作り続けている井上さんと池田牧場のおかみさんのメッセージが的を得ていた。

滋賀といえば近江牛ということで、飲食店経営者から近江牛を世界へ、なんて話もでていたが、それはそれとして生産現場を知らない人と、知っている井上さんやおかみさんの話では重みがまったく違っていた。なので、私としては大変興味深く捉えることができた。ただ、生産現場主義のお二人とそうでない方々のギャップをすごく感じたことは事実であり、番組の趣旨や意図は分からないが、感度の高い視聴者は私と同じように違和感を感じながら見ていたのではないだろうか。

おかみさんの「自分が食べているものに関心がなさすぎる」という話はまさにそのとおりで、自分が口にいれようとしている食べ物がどこのものなのか、そんなことにまったく関心がないのが現実なのかも知れない。

価値にはいろいろあって当然だが、プライオリティ(優先順位)の決定が胃袋を満足させることなのか、安全な食を選ぶことなのか、そろそろ真剣に考える時代がきているように思うのだがいかがでしょうか。

近年、ブランド牛は海外へ向けて販路を広げようとする動きが活発になっている。
近江牛もしかりで、マカオやシンガポール、香港へ向けての輸出に県をあげて取り組んでいる。

当店にも海外に住む日本人向けに、富裕層にと 各方面からお声がけいただくのだが、私はまったく興味がない。それよりも県内での消費を増やすことが、大きな価値のプライオリティだと思うのだ。

たとえば学校給食はいまも昔も、輸入牛肉やホルスタインなど、予算があるから仕方がないにせよ安価な肉が定番だ。それは今後も変わらないだろう。

海外へ目を向けることも大事かも知れないが、子供たちが食べる肉を出所のしっかりした近江牛にシフトできるように考えることが価値あるプライオリティだと思う。

10年ぐらい前の話だが、養護学校に当店が肉を卸していたことがあった。生徒や先生にものすごく評判がよかった。価格以上に価値のあるものを食べて欲しいと、がんばって近江牛を納品していた。

商売なので利益がでないと続かなのだが、一頭仕入れだからこそできる部位別単価を調整しながらやりくりしていた。ヒレやロースを取引先のホテルやレストランに高く買ってもらい、モモの単価を下げるといったやり方だ。

次第に先生たちや生徒の親御さんたちは、店舗にまでわざわざ買い物に来てくれるようになった。その当時から仕入れルートを公開したり、生産者名を納品書に印字したり安全性の工夫をしていた。そういった商品環境も支持された理由だと思っている。

ある日のこと、養護学校の職員の方が店舗に来られて、来期から給食に使う食材がすべて入札制になったと申し訳なさそうに言いに来た。職員の方は何度も何度も頭を下げながらどうしても当店の肉を継続して使いたいので入札に参加してくれないかと懇願された。

入札制になれば、近江牛を納品することはできなくなる。価格に振り回される商いはしたくない。私はこの日で取引を終了する決断をした。

プライオリティは、イイと思うほうから順番をつけていくのだが、価格オンリーの入札では安全な肉を提供できないし提案もできない。あの頃と私の考え方はなにひとつ変わっていない。

 

 

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