これからの時代は「産地よりもだれから買うのか」にシフトする
公開日:
:
2013/05/04
雑記
4月25日にきたやま南山にて開催された『田野畑山地酪農「志ろがねの牧」(吉塚牧場)の七代目種オス牛シチロウを食す会』の様子と共に南山の楠本貞愛社長がアンケート結果をブログに掲載されています(→)
非常に興味深いのが、42人の参加者のうち関係者以外の33人の方のアンケート結果を集計したグラフだ。
私なんかは、米スーパーマーケットチェーンの「Whole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)」の、家畜の飼育方法に応じた独自の格付け制度「Animal Welfare Rating」にすごく興味があるのだが、アンケート結果では動物福祉や環境などに対しての関心が低いようだ。
日本の格付け制度は、霜降り度合を最優先にしているのに対し、「Animal Welfare Rating」は、「Step 1」を得るだけでも、約100の基準をクリアしなければならないという厳しい制度だ。この格付け制度の特徴は、生産者と共同で行わないと実践できないこと、その結果としてより品質の高い製品づくりと、動物福祉に配慮した畜産の実現を目指している。
消費者から見ても「Animal Welfare Rating」といった客観的な基準によって、購買判断に役立つ情報が1つの製品に盛り込まれているということは、より高い安全性の確立につながるように思う。
シチロウの会でのアンケート集計グラフをじーっと眺めながらいろいろと考えたのだが、おそらく動物福祉や環境などは興味がないのではなく、非現実的で日常とはかけ離れているからではないだろうか。つまり見えないし想像すらできないのだ。
それよりも現実的な問題として、生産者や販売者が明確なものが指示されるのは当然だといえる。
私は畜産業界を変えてやろうなんてことはこれっぽっちも思っていないし、私がどうあがこうが業界に古くからこびりついた体質は変わらない。まぁそんな力もないのだが。しかし、私の周りにいる人たち、生産者や消費者はなんとか変えたいと真剣に思っている。私のような生産者のはしくれががんばったところでたかがしれているが、それでも近い将来、グラフ右側の棒3つが倍以上になればうれしいのだが。
「霜降りや柔らかさ」の結果については、まずシチロウを食す会にわざわざ参加するくらいだから、そこは求めていなないだろう。これは当然といえば当然で、それよりも注目すべきは「有名銘柄」の低さだ。
ここにブランド牛の生産者は注目すべきなのだが、いつだったかTPPについて、県内の生産者がインタビューに答えている記事が新聞に載っていた。「近江牛はしっかりとブランドを確立しているので心配していません」ですって。インタビューに答えていたのは2代目か3代目、つまり息子世代なのでBSEを経験していないんですね。だからこういう答えがでるのだろうが、しっかり父親が教えてやらないとダメですね。
私は、県内や県外、ほんとうにたくさんの牧場を何年もかかって訪れ、生産者の人となりに触れ、そして現在、共感できる生産者が育てた牛肉を販売している。その人たちがたまたま近江牛の生産者だったというだけなのだ。もしかするとこの先、近江牛じゃなくて名もない牛肉を販売するかも知れない。
これも私が目指しているところで、「近江牛だから買う」のではなく、「私ニイホがすすめているから買う」で決定してほしい。つまり「だれから買うのか」ということだ。
私自身は、経験も知識も技術もまだまだ未熟だが、それでも自分がおいしいと思った肉だけを消費者に届けたい。
このグラフが示すように、プライオリティは産地よりもだれが育てたのか、そして「だれから買うのか」にシフトする時代が必ず来ると思っている。もちろん、全体は変わらない。一部だと思うが、その一部の方に選ばれるよう私は絶対的なポジョニングを築いていきたい。そのためにはもっと肉を食べないと。
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