愛と胃袋、鈴木シェフが産地で感じたこと
公開日:
:
2013/09/03
牧場・生産者
9月18日(水)、19日(木)に三軒茶屋のフレンチレストラン「愛と胃袋」で開催される【新保吉伸×土田賢一 食語りの会】では、私が熟成肉と愛農ナチュラルポーク、土のめぐみ@土田さんが熊本の有機野菜を用いて鈴木信作シェフが腕を奮ってくれる。
しかも、2周年記念として、今回用意する食材は9月7日~30日まで使っていただけるとのこと。これはイベントに参加できない方も、ぜひ愛と胃袋へ足を運んでいただきたいですね。
ところで、熟成肉と愛農ナチュラルポークを料理する前に、ぜひ産地を訪ねてから素材と向き合いたいと鈴木シェフから打診があった。産地を実際に見て、生産者と話さないと料理のイメージがわかないということだろう。そして昨日、ご家族で産地に来ていただいたのだ。
天候は最悪の大雨だったがテンションはすこぶる高い。
まずは、愛農ナチュラルポークの産地、三重県伊賀市の愛農学園高等学校へ。ちょうど川上先生が松阪のと畜場から豚肉を引き取って帰ってきたところだった。養豚場を案内していただき、生徒たちと給食を食べたあと校舎を案内していただき大きな収穫を得て次は木下牧場へ。
先月、放牧場で気になっていた妊婦のやすこさんが男の子を出産していた。驚くなかれ16産めだ。これが人間の世界なら重宝されるところなのだが、牛の世界は子供を産めば産むほど価値が下がるのだ。市場価値がどうあれ、少しでもおいしくなるよう、そして高く売れるように付加価値をつけるのが私の役目だ。
熟成肉もその1つで、肉質が硬い経産牛をなんとかおいしくできないものかとたどり着いたのがドライエージングだった。最近ブームの熟成肉とは一線を画していると私は自負しているのだが、そのあたりの背景は、今週の土曜日(9/7)18時30分から日テレの満天☆青空レストランをご覧ください。生産から流通、販売、そして料理まで本当の意味での「見える化」をご覧いただけます。
16産もすると、お乳の出が悪いのか、子牛(ケンタと名付けられました)は少し苦労しながら乳首を吸っていました。こういう光栄がみられる牧場は年々減少する一方なのです。
電車の時間が迫り、最後に記念撮影。人がいて牛がいて子供たちやワンちゃんもいて、こんな環境で育った牛がおいしくないわけがありません。
業者から仕入れて証明書を貼り付けるだけのレストラン(肉屋もそうだが)が多い中、こうやって産地まで出向いて食材と向き合う料理人は多いようで少ないのです。特に大企業が運営しているホテルやレストランのシェフなんかは労働時間が7時間だとか8時間で、週休2日でどうやって料理を学べるのだろうか。
それよりも規模は小さいけれどフットワークが軽くて、産地や生産者と近い料理人を私は応援したい。使う量が少ないためどこの業者も真剣に対応してくれないという話をよく聞く。たしかにそうかも知れない。ただ、1頭の牛から得意な部位をたくさんの料理人で分ければ、今以上によい肉が手に入るはずなのだ。そのあたりの改革を今後やっていきたいと思っている。賛同いただける料理人の方は、ぜひご一報ください。
10月より、国産飼料100%で育てた近江牛が出荷されます。志の高い料理人に使っていただければうれしいです。
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