近江プレミアム牛、本日より出荷です
2001年のBSE発生以来、安全な牛肉を消費者に提供するため、日本では様々なBSE対策が行われてきた。そして10年以上にわたる日本の取組と対策は国際的にも評価されている。
そして、今年の7月より国産牛におけるBSE検査対象を「48か月齢超」に引き上げて全頭検査を見直すなど、新たなBSE対策が始まっています。このあたりはテレビなどの報道でご存じの方も多いだろう。
BSEしかり口蹄疫しかり、なにか問題が起これば風評被害による牛肉離れが起こる。ユッケ事件のような地方の一企業が起こした問題でさえ日本中がパニックになり、名だたるブランド牛も風評被害には勝てない。私は風評被害を情報被害と呼んでいるのだが国の対策はそれとして、この10年、自分たちの「食」は自分たちで守らなければだれも助けてくれないということを嫌と言うほど思い知らされてきた。
県内の農家を歩き、牛をみて、生産者と話して、いろいろなことに気づかされた。そして私はだれとつながらなければいけないのか。これからだれと一緒に行動しなければいけないのか。私の後ろには消費者がいる。安全な肉を心待ちにしている消費者がいる。生産者が飼う牛はペットではない。生活していくための経済動物だ。10円でも高く売れることが喜びである。そのために高く評価される格付けを基準に牛を飼い育てる。A5に近づくように育てるためには飼料設計をして、サシが入りやすいようにあらゆる工夫をする。
私は肉屋であり牛飼い(生産者)ではない。だからこそ信頼できる生産者とつながらなければならない。和牛は品種改良により濃厚飼料でしか太れない。狭い牛舎で、エサを食べるとき以外は寝ているだけの牛たちは、当然ながら筋肉は発達しない。そして筋肉と筋肉の間に脂肪が付くという現象が起こる。ビタミンを調整しながらサシという名の脂肪を意図的に入れる。そして、あたりまえのように生産者はサシをたくさん入れることを競い合う。もちろんそうではない生産者もたくさんいるし、血統の与来で望んでいないサシが入ることもある。
生産者が生きていくためには経営の効率化は不可欠だ。でも、せっかくこの世に生を受けて産まれてきたからにはストレスなく健康に育ててやりたい。
10年前、県内の農家を歩き、いろんなことを見聞きするうちに、すごい違和感を覚えてしまった。体重が重くなりすぎて立つこともできない牛たち。ビタミンの調整により目が濁っている牛たち。いつしか牛を通して人間の食を考えるようになっていた。そしてこの言葉が浮かんだ。
「動物が食べているもので私たちの健康が決まる」
私の話しに真剣に耳を傾けてくれた唯一の生産者が木下牧場の木下さんだった。私は精肉のプロではあるが生産者ではない。だから生きた牛のことはわからない。でも、木下さんは私の想いに共感してくれた。日本の畜産は輸入の飼料なしでは成り立たない。自給率10%以下なのだ。BSEや口蹄疫など、なにか問題が起こればまず飼料が疑われる。
当時の私の考えは、じゃー輸入の飼料をやめて国産にしたらええやん、だった。でもそんな簡単なものではなかった。国産の飼料なんてないのだ。やっと見つけても高くて採算が合わない。それでもいいと、飼料屋さんに高くても買いたいとお願いするも、今度はたくさん揃えられないと言われる始末。海外のものを加工して国産表示のものが大半だということもこのとき知った。
学べる場所へはどこへでも出かけた。木下さんと立命館大学にも通った。そしてようやくメドがつきはじめたのが2009年の頃だった。200頭すべての牛のエサを変えることはリスクがありすぎるので、まずは2頭からはじめた。
畜産関係者ならお分かり頂けるだろうが、近江牛を国産飼料だけで育てた場合、厳密には(自家産粗飼料50%、国産の配合飼料50%)、商業ベースで考えると採算が合わない。ぜったい合うはずがないのだ。もともと大きくならない但馬の血統にサシを入れることを目的としない飼育方法、さらに高価な国産飼料とくれば、肉の良し悪しに関わらず、最終仕上がり価格は、ブランド牛の相場でいくとA5以上となってしまう。つまりA2の評価であっても価格はA5以上ということだ。ものすごいリスクだ。そりゃだれもこんなバカげたことはやらないわな。
そして、昨年の試験的な2頭を参考にして飼料設計を組み立てなおした結果、枝重291kg、格付けA2、BMS2という私が理想としていた牛に仕上がったのです。
1年前から予約をいただいている飲食関係者の方もいたり、この日を楽しみにしていてくれたみなさまの支えだけでなんとか成り立つ取り組みです。
小さな枝肉半頭は、私たちの取り組みをいつも支えてくださっている京都のきたやま南山さんへ。もう半頭は、公表しても差し障りがないお店のみご紹介しますと、サーロイン&マルはセトレマリーナびわ湖さんへ、ウチヒラはクレメンティアさんへ、ヒレとスネは佐曽羅 EASTさんへ、ソトヒラはイルジョットさんへ、ランプはサルティンボッカさんへ、リブロースは11/1オープンの京都Citron Ble Renewalさんへ、カタロースは愛と胃袋さんへ、トンビはシュナパンさんへ、ウデは近江牛.comのわくわく定期便の会員様へ・・・というわけで初回の1頭はめでたく完売いたしました。
ハラミとサガリに関しましては、ハラミ1本は私が個人的に買わせていただき、もう1本とサガリはきたやま南山さんへ。肉そのものは赤身が強かったのですが、ハラミはなぜかサシが結構入っていました。待ちきれずに昨夜いただいたのですが、ただただ「おいしかった」それ以外に感想はないです。そして思わず手を合わせました。
ドライエージングさせないのですか?
と数名の方から言われましたが、あくまでも私が行っているドライエージングは、市場価値の低い赤身の肉をおいしくするための手段であって、近江プレミアム牛は自然のままに育てた牛につき、このまま食べていただくことが、これまた自然なのです。
信頼できる生産者から信頼できる料理人へ
そして私を信頼してくれている当店のお客様へ
誇りを持ってお届けさせていただきます。
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