史上最強のローストビーフはママの手作り
公開日:
:
2013/12/21
雑記
結着剤を利用したローストビーフの話題がテレビやネットニュースで流れる。なにをいまさらと思うのは私だけではないだろう。まともな食品で安くて良いものなんてないのだ。 そんなことは本当はだれでも分かっているはず。そりゃ私だって高いより安いほうが良いに決まっている。でも、これだけどっぷりと農畜産の世界に浸かっていれば買いませんよ、いくら安くても。
本来、適正な価格で販売すべき商品が特価になっていたらまずは疑うべきです。もちろん正当な理由の値引きもありますよ。牛肉の場合、変色すれば売りにくくなるので割り引いて販売することがあります。こういう場合はお買い得ですが、意味もなく安い商品は、流通の過程において何かが犠牲になっていたり「工夫」されてるからだと思うべきです。
とまぁ、こういうことを書きだすと長くなるのですが、私が独立して今年で25年が経ちました。あっという間でした。そのころからのお客様が数名おられますが、25年間私が切る(カットする)お肉を食べ続けてくれているわけですから考えればすごいことです。
この時期になるとローストビーフ用のブロック肉の需要が増えます。田中さん(仮名)は25年間、1年も欠かすことなくローストビーフ用のお肉をご注文くださいます。25年前に肉屋をはじめたとき、お金がなかったのでアパートの1階部分のテナントを借りて肉屋を始めました。いま考えるとすごい環境でした。そのころからのお客様ですから随分長いですし、家族ぐるみのお付き合いです。
2人のお子さんの成長とともにお肉の消費も増え、そして社会人となり、お子さんが結婚してご夫婦2人の暮らしになってからは、さすがに量は減りましたが、それでもスーパーのお肉は食べれないわ、、、なんて言いながら月に数回は買い物に来られていました。いつだったか奥様の体調が良くないとのことでご自宅まで配達したこともありました。
クリスマスになると田中さんちのテーブルにはチキンではなくローストビーフが並びます。結婚して遠く離れて暮らしている息子たちもクリスマスにはママが作るローストビーフを楽しみに帰ってきます。
購入される量がいつも半端じゃないのでよく食べるんだなと思っていたのですが、どうやらご近所や親戚にもお裾分けされていたようです(昨日、妹さんからお聞きしました)
私も数年前に一度だけいただいたことがあったのですが、それはそれはおいしかった記憶があります。
今年もそろそろ電話がかかってくる頃だな、とスタッフと話していた矢先にかかってききました。あれ、なんか声が違うな、と思ったら田中さんご本人ではなく妹さんからでした。
じつは姉は8月に亡くなりまして、今年は姉に代わって私がローストビーフを作ることになりました。でも、どれくらい頼んでいたのかさっぱり分からず・・・・
絶句とはこのことです。電話を切ったあとも唖然として言葉がありませんでした。いまも田中さんの顔が浮かびます。きっと12月になると田中さんのことを思いだすんだろうな。私が商売を続けて来れたのもこうしたお客様に育ててもらったおかげです。
大声で泣きたいほど悲しいですが、私にはいつものようにおいしいお肉をご用意することしかできません。
用意するお肉はランプ肉で、脂をすべてとってサシの少ないものを選びます。25年間もお肉を選ばせていただいているので好みはバッチリ把握しています。妹さんが作られてもきっとおいしいローストビーフに仕上がるはず。旦那さんや帰省する息子さんたちぜったい大喜びですよ。ママのよりおいしいかも。
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