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「熟成肉」にまつわる様々な評価

公開日: : 2013/12/24 雑記

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いま当店でいちばん売れているのはドライエージングビーフ(熟成肉)ですが、ここ3年ぐらいの間で一般消費者にもすっかり浸透してきた感があります。飲食関係者はかなり前から興味を持っていたようですが日本で入手できる術がなく、かといって自前でエージングするにはリスクが大きすぎるので主流はウェットエージングした真空パックの肉でした。現在もほとんどはウェットなのですが・・・。

ところが、ここ数年で経験と知識が実を結び成果を出し始めた食肉業者や一部の飲食店が販売を大々的にはじめたのです。そこにメディアが目をつけ拡散し始めた結果、今年のワードとして「熟成肉」が広く知られるようになったわけです。

当店では、25年以上も前から(もっと言うなら私の修行時代からさかのぼります)枝肉を吊るしたまま1カ月近く熟成させていたので、なにも珍しいことではありません。ただ、ニューヨーク方式のドライエージングに取り組み始めたのは3年ほど前からです。

そもそも私が熟成肉を手掛けたのは、経産肉をはじめとする赤身肉をおいしくする手段の1つとしてであり、霜降り肉にはない赤身肉のおいしさを広めたい、知ってほしいという啓蒙的なところがありました。

特に経産牛に関しては思い入れが強くて、正規の牛肉のような扱いをされずに加工品に回されたり、身が薄いものなんかは廃棄処分されてきただけに、なんとか人の口まで運べないかと考えた末の熟成肉だったのです。

そして今年の1月にNHKで特集されてからは、毎日のように問い合わせが殺到しました。さらに9月に満天☆青空レストランで放映されてからは異常なくらい問合わせが増え続けています。さらに料理雑誌で特集が組まれたりして飲食関係者からの問い合わせも多くなりました。

数に限りがあるのでだれかれにと販売することは避けていますが、価値観を共有できる料理人の方々には大変お喜びいただいています。一般のお客様からの問合わせや要望も多く、諸問題はあるものの今年からサイトでも販売させていただき、こちらもリピートされる方が増えつつあります。ただ、熟成肉はすべての方の舌を満足させられるかといえば、それはあり得ないことで特に独特の香りは好き嫌いが分かれるところです。

ブーム以前より熟成肉に携わってきた関係者は、熟成肉がブームになってひとり歩きすることを早くから危惧していたのですが、どうやらそういう風向きになってきているようです。当店にも熟成肉のワードで流行りもののように購入される方も多数おられます。そしてなかには「お肉も硬いし味もいまひとつでした」なんてレビューを書いてくる人もいるわけです。味に満足いただけないのは仕方がないとしてもサーロインの熟成肉で硬いというのは焼き方しか考えられないのです。

そのあたりはむつかしいところでもありますが、ブームに乗っかって普段あまり肉を食べない人が熟成肉を焼いたりするとあまり良い結果にならないのは当然といえば当然です。

まぁ、人の口なので気にもならないし仕方のないところですが、熟成肉は菌がうまく働いてくれないとおいしくなりません。当店の熟成肉は細菌検査も行い万全の態勢をとっているのですが、それ以上に熟成させる肉をかなり厳選しています。もちろん通常の肉同様に試食も繰り返し行います。仕上がりの40日目で一度チェックをかけて試食し、肉質、柔らかさ、味、香りなどを私の基準でクリアしたものだけを販売するようにしています。40日目で基準をクリアできなかった場合は50日、60日と期間延長させます。カットも私以外はやりませんので、肉の選定から管理、販売に至るまですべて私の手を通っているわけです。

すべてのお客様を満足させられる肉なんてあり得ないことです。柔らかい霜降り肉が好きな方もいれば、硬い赤身肉が好きな方もいます。食べ方も塩で食べたい方もいればソースをかけたい方もいます。ただ、この1年間、ご購入されたお客様の感想なんかをお聞きすると、熟成肉は肉好きこそが楽しむ肉なんじゃないかなと思うのです。火入れの失敗をくり返し、完璧に焼けたときの喜びたるものいただくメールや電話の声からもリアルに感じます。

サカエヤ(近江牛.com)はとっても小さな会社なので各部署に担当者なんていません。社長とは名ばかりで雑務から仕入れまでありとあらゆることをこなさなければいけません。そんな小さな会社だからこそできることがあります。しかも私にしかできないことがあります。もちろん1人ではできないので、私の周りにはいつも生産者がいて料理人がいてお客様がいて、そしてスタッフがいます。

近江牛だからすべておいしいなんてこともありえません。だからこそエサにまでこだわりたいのです。それでもおいしい肉ができるかどうかなんて確率的には五分五分なんです。枝肉にして熟成させ、そして精肉にして食卓にお届けするまでになんとか100%に近づけることが私の仕事なのです。それでも100%の出来なんていままでも数える程度です。

私の考え方を否定する人もいれば共感する人もいるでしょう。味覚と同じでそんなことは当然であり当たり前なのです。レビュー機能は購入時の目安としては便利なものですが、飲食店を評価するサイト同様に一方通行の情報は個人の主観が強すぎて私は信憑性に欠けると思っています。なので出張先なんかで飲食店を探すときでもレビューを見ることもなければ点数もあてにしていません。

雑誌でも料理評論家の感想を読ませていただくと専門知識が豊富でなるほどと勉強になることが多くあります。でも、味覚となればそれは別だと思うのです。私がいくらおいしいと感じてもそう感じない人もいて当然だし、その逆もしかりなのです。

私たちが一生懸命取り組んでいる国産飼料100%の近江プレミアム牛だって、いまのところはおいしかったと評判がいいのですが(好みが同じような人にしか販売していないので当然と言えば当然ですが)、、、これからは反する意見もあると思うのです。あって当然ですしないほうがおかしいのです。

食の評価ってむつかしいですが、私はいままでもこれからも自分がお金をだしてでも買いたいと思える肉を販売していきたいし、おいしさの基準は私がおいしいと思うかどうかで決めていきたいと思っています。

商人はある意味八方美人じゃないといけないと思うのです。でも、私は生意気かも知れませんが、好き嫌いをはっきり言える商人でありたいと思っています。そういう私が手掛けた肉を望んでいる人にだけに買ってもらえればそれでいいかなって。

 

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