ブレない経営を持続させるには
公開日:
:
2014/01/24
雑記
北海道幕別町に日本でも数少ない無農薬無肥料で「ジャガイモ・大豆・小豆」を生産する生産者がいる。折笠健(ますらお)さんがその人だ。農業をするかたわら、木村秋則さんから自然栽培のりんごの木を譲り受け育てている。
昨年の12月4日に北のフードソムリエ北村貴さんプロデュースで「新保吉伸×折笠健、食の可能性を信じる会 in IL GiOTTO」を開催していただいたのだが、素材のすばらしさを高橋シェフが見事な料理で楽しませてくれたのです。料理の前に折笠さんに農業論を語っていただいたのだが、自己紹介程度の予定が語りだすと次第に熱くなり時間の経つのも忘れて私たちも折笠ワールドに引き込まれていった。
農薬や化学肥料に頼る農業からの方向転換を図るだけでも大変なのに継続していくことの難しさを折笠健さんの言葉から強く感じた。あるHPに折笠健さんのメッセージが書かれていたので紹介したい。
「化学肥料の投入などが不用だった開拓時代の豊かな土地に復元し、作物が持つ本来の力をいかにして引き出すか…。減農薬、減化学肥料を基本姿勢として、子供たちに後を継いでみたいと思ってもらえるよう、理想を追求して栽培しています。手塩に掛けた私たちの作物を、ぜひ味わってみてください。」
信念を貫くということはなかなかできることじゃありません。地産地消を掲げて貫いている店なんてほんとうにわずかです。一頭買いやブランド名、生産者を看板にして商売を持続することの難しさはたくさんのレストランや飲食店オーナーとの付き合いから痛いほどよく分かります。貫くことで経営が圧迫するようでは元も子もないわけです。
肉牛農家が生きていくためには経営の効率化が不可欠です。赤身ブームが来たからといってサシを入れる育て方をやめるわけにはいかないのです。和牛の世界は格付けありきでサシがたくさん入ったA5に近づけるような育て方しないと高く売れないのです。そのためには牛に少々負担がかかってもそれは仕方がない。牛のキモチを考える余裕なんてないのです。
肉屋も同じです。利益率の良い牛肉を仕入れたい。どのような育て方をしているかなんてどうでもよいのです。そこは自分の商売ではないし(牛を育てるのは生産農家の仕事、枝肉から切り取った肉の塊を精肉にするのが肉屋の仕事)、だいたいが生産者の顔を謳い文句にした商売をしながら「育て方」はまったくもって関心がないのです。でも、重要なのはどうやって育った牛の肉なのか、、、少なくとも私はここにもっとも注視しそして最重要だと考えています。
食に関わる人々は、人の命や健康に直結する自らの使命をもう一度よく考えてみるべきだ。最近こういったことを見聞きすることが非常に多くなりました。テレビでも雑誌でもインターネットでも。
しかし言うのは簡単、だれもがこういった理想を掲げて自らの仕事と向き合っていると思います。ただ、そこには「経営する」という生きるか死ぬかのせめぎあいがあるわけでキレイごとばかり言ってられないのが現実です。
こういったことを踏まえたうえで、私ができることを考えると一番重要なことは私がブレないということです。私が食べたい牛肉を販売することがそもそもの基本ではありますが、何を聞かれても(質問されても)キッチリ答えられる牛肉であること。生産者はもちろんのこと牛に食べさせているエサ、牛の病気のこと、屠畜から流通、そして精肉になってから熟成を経て食卓に届くまでのすべてを把握し答えられること。さらに、すべてのセクションに私が関わっていること。
そう考えると大きな商いはできませんね。私の目が行き届く範囲の商売が私が考える安心であり安全なのです。
折笠健さんもきっと同じだと思うのです。先日、幕別の折笠農場を訪れたときに感じたこと、そして今日届いた折笠さんのジャガイモや小豆を見て触れて感じたことを少しまとめてみましたが、日本中を世界中を私が手掛ける肉で幸せに、、、なんてことできるわけがありません。でも、私の友人知人、そして私の好みに共感してくださる当店のお客様には喜んでいただける肉をお届けできる自信があります。指名買いしてくださる方々の顔を浮かべながら毎日肉と向き合っています。
昨日は、私が届けた肉が残念な料理として提供されてしまった。料理人を責めるつもりはないがあきらかに知識(勉強)不足は否めない。経験豊富な料理人であっても常にアグレッシブに学んでいかないと素材にそっぽ向かれますよ。焼かれた肉を見てすごく悲しかった。向上心のない料理人に大切な肉を預けるのは金輪際やめよう。
不定期で開催している肉Meetsは、料理人のチャレンジの場でもあり参加者が料理人を育てる場でもあります。毎回20名程度しか入れない小箱で開催しているのですがご興味のある方はぜひご一報いただければと思います。また、うちでもやってよ、、というご希望がありましたらぜひご連絡ください。
【肉Meets スケジュール】
1月28日(満席)愛と胃袋 in 完全放牧野生牛の内臓料理
2月04日(満席)ビストロ デ シュナパン in 熟成肉と愛農ナチュラルポーク
2月23日 肉と野菜とワインの魅力を味わう会 in きたやま南山
※きたやま南山と日本味育協会、肉Meets、クレメンティア、エーテルヴァィンの共同開催
申込み受付中(→)
2月27日(準備中)新潟燕市NAOMI in 熟成肉と愛農ナチュラルポークの会
3月25日(満席)完全放牧野生牛お披露目会 in イルジョット
4月07日(準備中)イルジョット in 近江牛タン食べ尽くし
5月09日(準備中)肉Meets in 左嵜 啓史×きたやま南山
5月13日(準備中)クレメンティア in 茶路めん羊牧場アニョードレ食べ尽くしの会
関連記事
-
仕入れは価格より品質重視
昨日に引き続き、イルジョットの高橋シェフですがすごく楽しそうに肉を焼いているのが写真からも伝
-
新鮮レバーは唐揚げや天ぷらにするとおいしい
週に2回、新鮮な近江牛の内臓が入荷する。 レバーを見るたびに、レバ刺し好きなお客さんの顔が
-
食べることも私たちの仕事なのです
ラーメン屋さんでラーメンの中に入っているチャーシューの産地はどこ? から揚げに使用している
-
「安売り商品」と「お値打ち商品」
当店の実店舗はJR南草津駅から立命館大学に向かう道路沿いにある。 「かがやき通り」と呼
-
体に良い健康的な牛肉をお届けすること!
様々なギフトシーンを想定して作った近江牛ギフト券だが おかげさまで、かなりの方にご利用いた