認定近江牛について私の考え方
公開日:
:
2014/04/10
近江牛
写真は、見た目は牛肉ですが、牛タンです。めちゃくちゃ需要が多いのですが牛は二枚舌じゃないので舌は1本しかとれず不足気味です。絶対数が少ないので要望に応えることはできませんがご勘弁のほど。
先日、熟成肉を使いたいと県内の飲食関係者から電話がありまして、事情は説明したのですが、ブログを読んでいるとのことでしたので、言葉足らずな部分を補足しておきます。
まず、そのお店は「認定近江牛」を看板にしているとのことでした。だから、認定を外れている近江牛をどのように売っていこうか(熟成肉はA3以下と経産なので)、、、みたいな話だったのですが、私からすれば取引する以前に方向性がまったく違うので取引をしない方向でお話しさせていただいたのです。ビジネスとして割り切った肉屋をやっているのであればよろしくお願いしたいのですが、私の場合はそれだけではないのでお断りさせていただきました。
認定近江牛に関しましては、サイトにも私の考え方を書いています(→)人間が食べることをやめない限り、食品の産地偽装は永遠となくならないと思うのです。そんな中、近江牛も例外ではなく、私は表面化しているいない関係なくグレーなものが多くあると感じています。
近江牛は、滋賀県が誇る特産品です。消費者に安心して買ってもらおうと滋賀県と近江牛生産・流通推進協議会が2008年に特に高品質な近江牛に「認定書」を付けて出荷する認証システムの運用を始めました。
当初は(株)サカエヤとして、認定「近江牛」の指定店登録は見合わせようかと考えておりました。理由はいくつかありまして、まず当店の取り組みは、生産者と共に作り上げていく近江牛であって、格付ではなく、どこのだれがどのような環境で育てたのかを重要視しているからです。だから、認定されようがされまいがどちらでもいいのです。実際、経産牛も近江牛になりますが「そんな金にもならへん牛、近江牛名乗らすな!」という声が結構あります。
ひどい話しでしょう。子牛を何産もした功労者を邪魔者扱いですからね。繁殖農家さんとの付き合いが濃いからこのような考え方をするのかも知れませんが、肥育農家さんや問屋さんから見れば、経産牛を扱うことはないのですから、もしかしたらどうでもよいことなのかも知れません。A4やA5の枝肉と一緒に吊るされてるのを見るだけで、当然ながら見劣りしますし、早く処分してしまえということなのでしょう。
近江牛の定義は、「生まれてから出荷するまでのうち、県内で飼育期間が最も長い黒毛和種」とされています。そのなかで、認証されるのは、枝肉格付がA4、B4等級以上の高品質な近江牛に限られます。関東や県内を中心に年間約4000頭出荷されている「近江牛」の約70%の枝肉格付がA4、B4等級以上ということを考えるとこの認証を受けることができる確立も高く、「高品質近江牛」というお墨付きがもらえるわけです。
しかし、私の考えは、血統こそ違えど、同じ生産者が同じ飼料をやり同じ環境で育てた近江牛は格付で評価されるよりも、味で評価されるべきだと思うのです。しかしながら現状は、味で評価する指標がないので見た目評価の格付け重視なのです。
当店では、生産者の顔、人柄、そして飼料に至るまですべてを把握しているからこそ自信と責任をもって販売できるのです。そして、それが「おいしさ」の裏付けになるのです。実際に、近江牛というブランドではなく、サカエヤのお肉をご指名くださるお客さまが全国にたくさんいらっしゃいます。もっと言えば、私から買うからこそ安心できる、といってくださる方もおられます。ありがたいことです。
そう考えれば、認定「近江牛」の指定店登録は意味がないのではないかと思ってしまうわけです。しかしながら、滋賀県の名産でもある「近江牛」を、県がバックアップして知名度を高めたいという思いも理解できますし協力できることはします。生産者も販売者も一体となって盛り上げることが一番だということも重々承知しています。
認定「近江牛」なら、なんでもいいというのではなく私が直接目利きして、そして納得のいく枝肉だけをおいしく精肉にしてみなさまの食卓にお届けさせていただくことが指定店としての責任であり、当店にしかできないことだと思っております。指定店に登録はしていますが、私の本質は、以上申したとおりです。だから認定近江牛ありきで商売しておられる方とは考え方が違うため、取引は遠慮させていただいているのです。
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