シャルキュトリーと肉、そして産地と生産者
ここ最近、お付き合いのあるシェフたちはシャルキュトリー(パテなどの肉加工)に力を入れている。イルジョット高橋シェフが作った愛農ナチュラルポークのモモハムには正直驚いた。仕事柄、肉の加工品は結構口にしている。いろんなシェフのシャルキュトリーを食べてきたが、高橋シェフが作るハムは愛農ナチュラルポークの軽やかさと脂のおいしさを見事に引き出している。いやぁー参ったというしかない。
こういうハムを食べてしまうと市販のハムはぜったい食べられない。いや、食べたくないと言ったほうが正しい表現かも知れない。実際、個人で外食するときは店も料理も自分で選んで行くので失敗は少ないのだが、セミナーなどの懇親会で食事をするときは幹事まかせなので、たまにとんでもない料理がでてくることがある。低予算の場合は仕方がない部分もあるのだが、それにしても・・・という内容のものが結構あったりする。そういう場合は無理に食べずに帰りに肉を食べに行くパターンが多い。
こちらのパテはLe14e(ル キャトーズィエム)茂野シェフが作ったパテだが、材料は愛農ナチュラルポークの前肢だ。茂野シェフはパリ時代から、パテに使う豚肉は、よく動いて味が濃い前肢を好んで使っていたようだ。それにしても愛農ナチュラルポークの脂のうまさが存分に発揮されている。恐ろしいくらいにうまいパテだ。たまらなく赤ワインを1本空けてしまった。
私は、気にいった料理に出会うと、メニューを眺めながらあれもこれも食べたくなる性分なので、お持ち帰りをお願いすることにしている。Le14eに行くと野菜をつまみ、ワインを飲み、ステークフリットをガッツリ食べるのでパテまで食べられない。ということでお持ち帰りなのだ。我が家の食卓に茂野シェフの料理が並ぶわけだから、そりゃご機嫌な夕食になるわけです。
アルコールを提供する店はどうしても子供の入店が難しいのですが、お持ち帰りできるのであれば、ぜひ子供たちにこそ食べさせてやってほしいですね。子供の味覚は3~12歳で決まるそうですから、この時期にたくさんの食経験を積ませてやることが大人の役目だと思うのです。
こちらは、銀座にある有名店で焼いてもらった熟成肉です。鹿児島県産のサーロインです。注文内容は基本的には私にお任せなのですが、出荷日の肉の状態で近江牛にするのか他県産のものにするのかを選んでいます。近江牛しかダメとか言われると辛いものがあるのですが、このように私に任せてくれると非常にやりやすいわけです。近江牛より他県産の名もない肉の方が仕上がり具合が優れていることもありますからね。ブランドより私を信用してオーダーいただけるので、必ずお店に伺って食事をしシェフと会話するようにしています。そのうえで好みを把握し、それに見合った肉選びをするわけです。
シャルキュトリーに使う肉に関しても、作り方にはこだわるけど肉そのものにこだわっているシェフは少ないんじゃないかな。じつは以前まではシャルキュトリーに使う肉は、わざわざ仕入れるのではなく余った肉で作るものだと思っていました。しかし、愛農ナチュラルポークと他の豚肉とではあきらかに仕上がりが違うということを体験し考えが少し変わりました。。原価の問題もあるので冷蔵庫の掃除的な考え方も間違いではないのですが、素材の影響って大きいと改めて思い知らされた次第です。
ところで、夏目前にして各誌牛肉特集で盛り上がっていますが、専門誌になると牛肉の羅列ではなく「焼き方」の特集がここ最近では目立つようになってきました。あいかわらず「熟成肉」のワードは強いのですが、「熟成肉」+「焼き方」とか、まるでネットのダブル検索のようです(笑)
しかし、残念ながら作り手にスポットにあてた記事は見当たりません。「国産」とか「和牛」とか大きな括りではなく、産地や生産者をクローズアップしてからの「国産」であったり「和牛」であるべきだと思うのです。おいしさの奥深さは、どこのだれが作ったものなのか。そしてどんなエサを与えたのか。ここが重要だと思うのです。
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