ジビーフの里でみた西川奈緒子さんの雄姿と環境維持の重要さ
公開日:
:
2014/06/21
ジビーフ(完全放牧野生牛) 完全放牧野生牛ジビーフ
先日、焼肉のコースを食べさせる店へ行った。正確には連れて行かれたのだが、赤身、赤身と続いてバリバリにサシが入ったハネシタがでてきた。一口サイズが2枚皿に乗っていた。店の主人のしたり顔とは裏腹に、あまりタイプではない肉柄だったがコース料理なので断るわけにもいかず、軽く炙るように焼いた。2枚で30gぐらいだと思うのだが、正直気持ち悪かった。ケンネ脂(すき焼きするときに付いている脂)を食べているのとあまり変わらない。体に良くないものを食べたような….. そのあとに出てきたハラミがすごくおいしく感じた。
サシに価値観を求める人が少なくなってきている。「時代は赤身」というタイトルの雑誌も目立ち始めてきた。たしかに私の周りでも「赤身」が話題の中心だ。しかし、サシが悪いと言うわけではなく、それを好む人もいなれけば日本の畜産は成り立たなくなってしまう。霜降り肉があり赤身肉があり、その延長線上に熟成肉があり、いわば牛肉の多様化が加速していると思えばいいわけだ。これらは糖質OFFをはじめとする健康ブームの煽りなのかも知れない。
私がサシを良しとしない考え方なので、見方によっては批判的に捉えられるかも知れないが、好みではないという、ただそれだけだ。自分が好んで食べないものを自信を持って売るわけにはいかないし、ましてや食べもしないものを「おいしい」と表現することもない。それが私が目利きして買い付けた肉であってもマズかったらマズいと言う。ごまかしても食べればわかるんですから。
私の口に似たような方が買ってくれていると思うし、そこを目指しているのですが、だからこそ、ウソをついても食べれば分かってしまうのです。ぶくぶく太らせて不健康に育てた牛の肉をおいしいとは思えない。というのが私の根底には強くあるのです。
さて、前置きが長くなりましたが、今回の「道東生産者をシェフと食を愛する人々でまわるツアー」のメインでもある、ジビーフはまったく新しい価値観を生むであろう牛であり、ならば現地で体験してみようじゃないかと東西のシェフたちも参加してくれた感動の旅だったのです。しかし、よくよく考えれば、牛は草食動物なので、ジビーフの里でみた姿は、本来のあるべき牛の姿なのかも知れない。
山間放牧といっても私たちにとっては山登りのようでもあり下着は汗だくで、牛が作った道をひたすら歩くのでした。牛はすごい… ただただすごいと感動したのでした。
写真を撮り損ねましたが、駆ける牛、崖から下りる仔牛はまるで鹿のようで、普段見かける牛舎で繋がれて運動もさせてもらえない牛たちとは別世界の生き物であり、まさしくジビーフなのです。
ジビーフの特徴は、よく歩き回り野草(笹やよもぎ)だけを食べているので、赤身率が高く、サシがまったく入りません。肉臭さもなくそのかわりグラス臭が強いので好みは分かれると思います。
たまに、和牛のニオイが嫌だと言うお客様がおられます。過去2度ほど経験しているのですが、私には何を言っておられるのか当初分かりませんでした。というのもあたりまえに感じていた肉のニオイも、滅多に食べることがない人にとっては「嫌なニオイ」と感じる場合があるのです。そういう方にはジビーフをぜひ試していただきたいものです。
ジビーフの里は200ヘクタールですから、東京ディズニーランド5個分に相当します。あらゆる生物が生息しているこの環境を守ることも大切な使命であり、ジビーフとの共存により自然が守られているように感じました。
この日は、NHKさんも取材に来られていて、ジビーフを通して、分業化や効率化が極限まで進み食や命についての重みが失われつつある社会で、これからの農業のあり方、食のあり方、人間と動物の持続可能な暮らし方について考えてもらう内容で放送されるそうです。
放送は、7月4日(金)7時45分からの「おはよう北海道」5分の特集企画です。
そして、7月11日(金)19時30分~19時55分の「北海道クローズアップ」25分の特集番組で放送されるようです。全国放送ではありませんが、北海道の方にこそご覧いただければと思います。
さて、山から下りて待っていたのは、ジビーフやじゃがポークのBBQです。シェフたちがじっとしておられずに焼き係を担当してくれるという、なんとも贅沢なBBQでした。
今回のツアーには、木下牧場のゆきちゃんとその美さんも参加したのですが、改めてこの2人もすばらしさを再確認しました。2人のアドバイスは的確で、ジビーフが秘めていた可能性を大きく引き寄せてくれたようです。
世の中に牛肉はたくさんあります。どれもおいしいでしょう。しかし、顔が見えている牛肉がどれくらいあるでしょうか。プロだから肉に包丁を入れればわかる、なんてことを言う人もいますが、それはそれですばらしいと思います。
ただ、どんなに遠くても現地まで足を運び、作り手の人柄に触れ、想いも一緒に込めて料理するシェフの言葉の重みは必ず料理に反映されると….. 私はそう思います。
最終日には、茶路めん羊牧場へ寄ることができました。需要に供給が追いつかない状況が続いていますが、ホンモノとはこうあるべきという姿を垣間見せていただき大満足の3日間を締めくくることができました。
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