モモ肉の使い方
公開日:
:
2014/07/31
商品
モモはランプ、ソトヒラ、ウチヒラ、シンタマの4部位に分かれるのですが、おもしろいことに地方によって呼び名が違います。例えば、シンタマは関西ではマルと呼びますし、ヒレも関西ならヘレと言う人が多いです。
私が牛肉の世界に入った頃に先輩から指導されたのは、ランプはステーキか焼肉、それ以外の3部位はすき焼きかしゃぶしゃぶに使うように教わりました。特にソトヒラは肉質が硬いので薄めにスライスして、余った端材は焼肉用かカレー・シチュー用、もしくはミンチに使うこと。これがモモ肉を使う基本みたいなものでした。
おそらく私と同世代の職人さんは同じような経験をされてるんじゃないかな。ところがいまやウチヒラもシンタマも驚いたことにソトヒラまでもビステッカにするシェフが現れました。火の入れ方やカッティングを変えればそれぞれの味が楽しめるというわけです。
さらに、肉屋が一頭すべてを使いこなすやり方と焼肉屋さんとではまったく違う発想になります。たとえばチマキ(すね肉)は、肉屋ではミンチや煮込み用として商品化することが多いのですが、焼肉屋さんは薄くカットして切れ目を入れてメニューとして売ります。ミンチにしか使えないという固定観念があったため最初は驚きましたが、食べてみるとこれがじつにうまい。いまのようにいろんな部位を楽しめるようになったきっかけは、焼肉屋の職人さんが創りだした技術が反映されているのだと思います。
ビストロやイタリア料理のビステッカでは、ランプを使っている場面をよく見かけます。仕入れ形態としては、ランイチ(ランプとイチボ)で仕入れることが多いと思われます。ランプだけ、イチボだけだと業者は嫌がりますしランイチとして1つの部位(商品)になりますので、このあたりを誤解されている方が非常に多いように思われます。
ただ、ランイチは10kg前後ありますので小さな店だと持て余すかも知れません。そういう場合は、業者さんにいくつかに分割してもらって真空パックにしてもらうと良いでしょうね。ランイチでもランプは赤身ですが、イチボはサシが入りやすいので(特に和牛でA4以上はサシがよく入ります)お客さんの様子を見ながら、ランプにこだわらずシンタマやウチヒラを使ってみるのもおすすめです。
肉質は少々硬いのですが、ソトヒラも焼き方によってはかなり旨くなります。モモのなかでもよく動く部位なので旨味が凝縮しています。写真はサルティンボッカのビステッカです。先月からランプからウチヒラに変更していただきました。木下さんの牛指定なのですが、ここ最近の木下さんの牛は格付け的にA4が多く、イチボにサシが入るため求められているものと違ってきているとの判断からです。飼料を工夫し、ストレスを軽減した育て方をしていても血統によりどうしてもサシが入ります。木下さんの牛といえどもサシは脂ですからたくさん食べることはできません。
部位にこだわることも悪くはないのですが、その前に肉質を見極めながらお客さんが求めているものは何なのか?… そこを探って標準を合わせた肉選びをしなければ満足度は下がると思うのです。
まずはいろんな部位を試して、特性を知ることが大事だと思います。
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