ラ ピョッシュで物語ごとおいしく焼かれたジビーフが食べられます
公開日:
:
2014/10/05
ジビーフ(完全放牧野生牛) 完全放牧野生牛ジビーフ
東京人形町に「ラ ピヨッシュ」というビストロがある。超繁盛店にもかかわらず林さんと宮崎さんが2人で切り盛りしている。よく2人で回せるなぁ、というのが一番最初に訪問したときの印象だった。
日本橋で講座を受けていたときに、知人に肉を食べに行こうと連れていかれたのがラ ピヨッシュだった。2回目の訪問時だったか、林さんに冷蔵庫を見せてもらうと豚が半頭、それも枝で吊るしてあった。なにこの店?… て感じです。
枝肉で吊るしているということは、熟成技術と骨を外す技術があるということなので… またまた何者?… て感じです。
ロース系は炭火焼で、あとの部位はシャルキュトリーに使うようだが、店内を眺めてもメニューを見ても「自然」というワードが随所から感じることができる。林さん自体が野性味溢れすぎなのだが、保存料や発色系の添加物を加えていないシャルキュトリーは当たり前のようにうまい。ワインも自然派で相乗効果でついつい飲みすぎてしまう。
私は魚を食べることがほとんどなく、唯一食べるとしたら鮨屋でつまむ程度だ。昨夜は肉が焼けるまでにと根室産のサンマをいただいた。これが抜群においしかったのだが、いやはやこの店には驚かされっぱなしだ。
さて、私がレストランへ肉を送るときは、シェフの好みに合わせた肉を届けるようにしている。ジビーフのような特殊な肉に関しては、肉をよく知っている経験値の高いシェフにお願いするようにしている。
前々からラ ピヨッシュの林さんとはジビーフの話しでやり取りがあったので、9月19日に入荷したジビーフのなかから、焼き手の宮崎シェフが好みそうな部位をお届けしたのでした。しかし、お届けしてから2週間近く経っているわけでして、昨夜あたりからようやくお客様に提供し始めたというのです。
牧草しか食べていない牛なので、どうしても水分量が多くなります。肉も締りがないので2週間程度寝かせてから使うと肉が落ち着きます。ラ ピヨッシュの冷蔵庫に馴染むといったほうが分かりやすいかも知れません。こういった経験からくる知識がないとジビーフのような特殊な肉は扱えないし、私自身も案内することができないのです。ですから、各地の飲食関係者から問合わせいただいても興味本位であきらかに経験値が低い方にはお断りさせていただくことがほとんどなのです。だって料理するほうもされる肉も、さらには食べる人も可愛そうな結果になるのは目に見えてますからね。
この日に解禁となったジビーフからイチボを焼いてもらいました。とにかく硬かった(笑)
もちろん「硬い=マズイ肉)ではなく、歯で肉を食いちぎっている感じです。ガシガシと歯茎に食い込むような食感、飲み込む寸前に漂うグラス(草)の香り。現地へ何度も足を運んでいる私としては、いやがおうにも様似の大自然で戯れるジビーフたちの姿が浮かびます。
いやぁーうまい!本当にうまい!… そんな私の顔を見て、林さんもニコニコ、ニコニコ。
ジビーフはサシが入ったとろける肉が食べたい方には不向きであり、「うまい肉=サシ」という考え方の人が食べると残念な結果になるかも知れません。
好みの問題ではありますが、ブームになっている赤身肉とはまったく違った赤身肉であり、ワインで言うところの農作物やそれを加工した農業製品に対して使われる「ビオロジック」に近いかも知れません。いや、さらに踏み込んだ「ヴァン・ナチュール」のほうがより近いかも。
世界中どこにいても牛肉は手に入ります(宗教上の問題は別として)しかし、その牛肉のほとんどは化学の力に頼り、人間が手を加えて作り上げていきます。牛を霜降りにするには飼料を配合し、ビタミンを調整しながら育てることで「サシ」が入りやすくなる確率が高い牛ができます。ビジネスですから利益がとれる牛を作ることが当然ではありますが、真逆の育て方をしているのがジビーフなのです。
牛を作るというより物語を作っているようなジビーフは、金儲けできない牛です。1年に2~3頭の出荷ではビジネスとはいえません。もちろんサシも無縁です。関わるみんなが夢を見て、そして牛も食べる人間も「健康」を意識した気持ちの入った牛肉なのです。
9月19日に入荷したジビーフの大半は売切れてしまいましたが、肩ロースをはじめいくつかの部位は熟成させていまして、あと少し寝かせてから販売を予定しています(10月20日販売予定)
じつは過去2回、ジビーフの熟成で失敗していまして、もうやりたくなかったのですが生産者の西川さんが会うたびに「熟成、熟成」と憑りつかれたように言うものですから、違う方法でチャレンジしてみたのです。いまのところうまくいってくれてるので気持ち的にはすぐにでも販売したいのですが、もう少し待つことで必ずおいしくなってくれると信じています。大自然を相手に育ってきたジビーフですから、あわてず焦らずじっくり熟成させてから販売させていただきます。
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