ボラン農場を訪ねて
公開日:
:
2014/11/25
フランスの旅
ブルターニュ最終日はトレマルガットのボラン農場へ。ここにはフランスに来て40年というMASAYOさんがいる。3年前にきたやま南山で開催した短角牛を食べる会にわざわざフランスから来てくれたのだ。そのときに「一度私の牛を見にきてくださいよ」と言われ気軽に「いいですよ」と言ったのが3年がかりで実現した形となったのです。一応、公言したことは実行するタイプなので牛を見た時は胸にぐっとくるものがありました。
アルモリカンという品種ですが、私にはどっからどうみても短角牛にしか見えませんでした。実際はよく見れば違うのですが先祖は同じかも知れませんね。
牛はMASAYOさんのご主人、ジャッキーが管理しているのだがエサはBIOのものしか使わないとのことだった。基本は自然のものや自分たちが作ったものしか与えないとのことだった。
牧草地には馬もいて牛と共存している。そして寄生虫対策にも役立ったいるとのこと。牛が食べ残した草は馬が食べ、馬が食べ残した草は牛が食べるという自然のサイクルが成り立っている。さらに馬の寄生虫を牛が食べると体内で寄生虫は死んでしまうのだそうで逆もしかりでだそうだ。放牧なのであちこちに糞があるのだが、糞の近くの草は栄養たっぷりで育ちがいい。しかし牛は自らの糞の周りの草は食べないし、それは馬も同じこと。実に理にかなっている。
こういった環境下で育てているので投薬は一切なしで、私的にはジビーフとだぶる。ボラン農場には現在21頭のアルモリカンが放牧されているが、飼い主は1頭づつしっかり名前と顔が一致している。人懐っこいので体をすり寄せたりしながらまるで会話しているように見えた。
冬は牛舎に入れるのだが、牛たちは喜んで入るらしい。というのはMASAYOさんは牛を育てるのは教育だという。牛舎につなぐ=エサをもらえると覚えこませているらしく、アルモリカンたちは列を乱すことなくきちんとつながれるそうだ。「牛をつなぐ」という言葉は聞きようによってはいい意味にとれないかも知れないが、MASAYOさんとジャッキーの牛への愛情たるもも半端ではなかった。
例えば、馬の両脇にいる2頭は経産牛なのだが、肉にせず飼いつづけるとのこと。日本なら考えられないことで、生かせば生かすほどエサ代がかかってしまうので種がつかなくなれば屠畜するしかない。それが経済動の宿命なのだ。
フランスの旅はいくつかの気づきがあったのだがそのなかの1つがシャロレーについてだった。日本でフランスの牛といえばシャロレーと答えるくらいメジャーなのだが現地の事情は少し違っていた。生産者も肉屋もレストランのシェフたちもシャロレーに対してあまり良い印象ではなかった。実際、私が訪ねた牧場やレストランでシャロレーを見かけることはなかった。フランスといえばシャロレーじゃないのか?… 少なくとも日本の畜産関係者やシェフはそう思っている人が多いと思うのです。
牛の世界も流行があり、いまはブロンドダキテーヌが人気だそうで、次いでリムザン、シャロレーの順だそうだ。シャロレーは196年~1970年代に流行った牛で、シャロレーに種を付けると良い子が産まれるからと人気がでたそうだ。
しかし、シャロレーは大きく産まれるので帝王切開が多く、しかも量産しなければならない。アルモリカンのように小さく産まれて大きく育つ牛のように楽ではないのだ。骨が太く歩留りが悪い点でも人気がないようだ。
14区のビストロ、セヴェロのオーナーでもあるウィリアムなんかシャロレーは大嫌いとまで言っていた(笑)
好みはあるにせよ、私が今回のフランスの旅で見聞きした事実は、日本での情報とは違っていた。たまたま私が廻ったところがそうだったのか… そのあたりのことは正直分からないのだが、デノワイエの店でもイブ=マリの店でもそしてスーパーでもシャロレーの肉は見なかった。
フランスのスーパーは、品種を表示する義務がないので、国名や肉牛、乳牛の表示しかないのでたまたま買った肉がシャロレーだったということはあるかも知れない。あとはシャロレーが好きな肉屋で売られているくらいだろうか。
フランスでは肉がたくさんとれる牛が人気なようで、歴史を振り返ると、赤身を追い求めたあまり味のない肉になってしまったということを至る所で耳にした。それは日本の和牛の霜降り信仰にも言えることではないだろうか。
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