素材を知り尽くしているからこその熟成
公開日:
:
2014/12/17
グルメ
27歳で独立したのですが、毎日暇で暇で昼寝ばかりしていました。まったくお客さんが来ない日も年に数回あるぐらい暇で、それでもパーツ仕入れはせずに枝肉1頭を問屋から仕入れていました。いまのように真空パックがなかった時代ですから、一気に骨を外してしまうと暇な店では腐らせてしまいます。それでどうしていたかというと、必要な部位だけ抜き取ってあとは骨付きで保存していたのです。写真はウチヒラ、ソトヒラ、マルを外してランプのみ骨付きにした状態です。マルだけ残す場合もありますし、ソトヒラだけ残す場合もあります。
これが理にかなっていて、適度に水分が抜けていくのでおいしくなるポイントがあるわけです。例えば牛肉は個体差によって水分量が異なりますから、この状態で10日目においしくなる肉もあれば30日後においしくなる肉もあるわけです。数値で計ったり科学的な根拠はなにもないのですが、毎日肉を見て触っていればなんとなくわかるものです。シェフがステーキの焼き加減を指で確かめてるのと同じような感覚です。
さすがにいまはこのような面倒なことをやっている肉屋はないと思いますし、技術的にも骨を外すことができる職人も減ってきているのが現状です。問屋からカット肉を仕入れてさらに自店で細かく分割した肉を真空パックにしたものを必要に応じて使っていくのが大半じゃないかな。歩留りの点から見ても経営的にもその方法がベストだと思います。
ただ、味に関して言えば、真空パックしないほうが肉の旨味が閉じ込められたままなのでおいしいと思っています。このあたりの考え方は人それぞれだと思いますが、適度に水分を逃がして肉を乾かしてやるほうが私はおいしくなると思っていますし、実際に真空パックしたものと比べるとかなり味に変化を感じます。
わざわざこのような手間なことをやる必要はないのかも知れませんが、肉がおいしくなるのであれば追求したいのが私の性格でして、来年に向けてちょっとおもしろいことを実験中です。乞うご期待といったところです。
さて、先日伺った喜邑(きむら)さんはなんと魚を熟成させているんです。しかもミシュラン2つ星です。ネタによって熟成期間を変えているようですが歩留りはなかり悪いとのこと。まぁ、あたりまえですが肝心の味は不思議ワールド全開でハマれば普通の鮨では満足できなくなるかもです。
なぜ魚を熟成させようと思ったのですか?… と訪ねると、店が暇でしてあれこれ試していくうちに数日後においしくなる瞬間があって・・・
なんかどこかで聞いたような話(笑)
大将の話しを聞いていて、私が一番感じたことは、肉でも魚でも素材を知り尽くしているからこその熟成であるということです。なんでもかんでも熟成させればおいしくなるかと言えばぜったいそんなことはあり得なくて、フレッシュで食べたほうがおいしいものもあるわけです。それを見極められる目を持っているかどうかです。そのためには毎日肉を触って食べて自分でも料理して経験値を積むしかないのです。
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