技術取得についての考え方
あるシェフとの会話でなるほどと納得したことがありました。シェフは長年パリで修行したのち帰国後独立したのですが、ツテもアテもなく渡仏した当時は右も左もわからない状況の中、食べていかなければいけないのでなんとかレストランで雇ってもらったそうです。しかし、言葉の問題や風習の違いなどから使いっぱしりばかりだったそうです。その後、しだいに言葉も覚え自分で給与なども交渉できるようになると、高く評価してくれるレストランを渡り歩き、めきめきと頭角を現したそうです。
いまフランスでは多くの日本人シェフが活躍しています。日本人が中心で回っているレストランもあるくらいです。とにかく日本人はよく仕事すると評判だそうです。そういった日本人の勤勉さを見てフランス人が日本で修行するケースも少なくありません。日本へ行けばすごい連中がわんさかいてレベルの高い仕事を目の当たりにできるぞ、と息巻いてやってくるわけです。
しかし、そんな想いとは裏腹に実際に日本のレストランで働いてガッカリすることが多いようです。つまり、異国の地で働いている日本人はなにがなんでも精神でくらいついて料理を学んでいるのですが、日本のレストランで働いている見習いはそこまでのガッツキはないというわけです。そりゃ目的意識が違いますからね。もちろん見習い全員がそうとは限らないし、私の知っている見習いはかなりガッツがあります。ただ、相対的に比較するとそのように映るという話です。
ところで、料理業界でも畜産業界でも深刻な人手不足ですが、問題は新人さんではなくも教える側にあるのかも知れません。いまの若者に見て覚えろと言っても通用しませんし、マニュアルで縛りすぎても応用の効かないスタッフが育ってしまいます。肉屋は3年勤めてようやく肉が切れるようになると言われていますが、3年もたずに辞めてしまう若者が大半です。技術習得に関する古い風習というか価値観を捨てて、いきなり肉切りを教えてもいいと思うのです。もちろん手順は踏まなければケガする恐れがありますが、私たちが若いころに教わったやり方をいつまでも続けていくには今の時代、無理があるように感じています。
先日、きたやま南山にて開催しましたイブマリとのコラボは、意外にも骨抜き(私は捌きといいますが脱骨作業という人がいたりいろいろです)を覚えたいという声が多数ありました。骨抜きこそ教える側は苦労して覚えた技術をそんな簡単に教えられるかといった感覚なのですが、先ほどの話し同様、そんな時代ではないと思います。料理人が覚えてくれれば、真空パックに頼らず、その都度新鮮な肉を提供することができます。もちろんおいしさレベルも上がりますので、お客様にも喜ばれます。まさしく三方よしで多様性が生れると思うのです。
こういったことをオープンにしながらシェフ同士の交流を図り、さらには技術交換もしていければ業界の発展にも繋がると思うのです。一店舗でお客様を独占できることなんてあり得ないのです。だったら交流して技術を分け合い、そこにオリジナリティを加えることで独創的な料理ができあがると思うのです。
最近は、骨付きで欲しいというシェフが増えてきました。成牛は無理だけど仔牛の骨なら外せるというシェフ多いんですね。ということで、ホワイトヴィール(乳飲み仔牛)が入荷しています。仔牛の骨は意外と簡単に外せますよ。まずは試してみてはいかがでしょうか。
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