ますますおいしくなる近江プレミアム牛
4月2日にと畜された近江プレミアム牛。骨付きで寝かせておいてちょうど1ヵ月が過ぎたのでリブロースとサーロインをノコギリで切ってみました。いい感じに水分が抜けていたのですがあと10日程度このまま寝かせておくとかなりおいしくなってくれるはずです。少し味見をしてみたのですが、ねっとりした肉質で口の中いっぱいに旨みが広がり余韻が長く続く惚れ惚れする肉でした。
木下さんの牛でもやはり近江プレミアム牛は別格のようです。給与している飼料がそもそも違うのですが、国産飼料オンリーで最大の特徴としては酒粕を1日7~8kgふんだんに与えている点です。しかも2種類。福井の銘酒、加藤商店さんの梵と滋賀の銘酒、福井商店さんの萩乃露の酒粕ですが脂質に影響がでているように思います。
穀物を給与しないため大型化している和牛とは逆行している感じですが、当然ながら太らないのでサシも入りにくくなります。もともとは赤身の肉を作ろうということで始めたプロジェクトだったのですが最初からうまくはいきませんでした。国産飼料が安定して手に入らないのと手にはいってもやたらと高い。さらに、近江プレミアム牛にするのにどんな牛でもいいかといえばこれが曲者で、国産飼料だけでの飼育に耐えられる強い個体を選ばなければいけないのです。最初なんてサシ入りまくりでガッカリしたものです。通常ならサシが入って評価される和牛の世界ですから真逆の取り組みは同業者から変人扱いされました。まぁそれはいいのですが、ようやくここにきてかなり安定した味をキープできるようになってきたのです。
ただ先にも書きましたが、国産飼料は輸入飼料に比べてかなり割高で、しかも個体は300kg前半と大きくならずサシも入らないので格付けはよくてA2。市場価格をスライドさせれば生産者はやっていけない(経営が成り立たない)現状があります。そのあたりは取り組み当初から料理人の方々が買い支えてくださったおかげで継続していくことができています。
近江プレミアム牛は使ってくれる料理人のみなさんが本当に感動してくれるんです。なにも味付けしなくていいと。他の肉との大きな違いは、冷蔵庫で数か月保管しておいてもまったく動じないというか変色が少ないのです。理由はわかりませんが日を追っていくごとにおいしくなっていく感じがします。
近江プレミアム牛は年間出荷数が10頭程度です。ビジネスとしては当然ながら成り立ちません。ただ、私たちが目指していることは生産者と料理人、そしてお客様をつなぐリレーションシップであり、本当においしい牛肉を追求した結果なのです。飼料代や枝肉を寝かせる期間などを考えると原価なんてわからなくなりますし、それよりも牛肉で感動してほしいという想いの部分が強くあります。
さきほどある料理人の方と話していたのですが、木下さんの肉を使って価値観が変わったと言うんですね。この方は実際に牧場まで足を運んでいるのですが、技量だけではなくこういった経験も料理をするうえで必要なのかも知れません。
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