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ジビーフやい子×銀座レカン高良シェフ

ジビーフ『やい子』がと畜されたのが9月29日。お肉になってからは料理人のみなさまに丁寧に扱っていただき幸せな皿に仕立てていただきました。イベントもいくつかやらせていただき、それはもう大好評でこんなに大勢のみなさまにおいしく食べてもらえる『やい子』はなんて幸せなんだろうと生産者の西川奈緒子さんと話していたのです。

そして、ジビーフ『やい子』最後のイベントは、と畜から40日以上も先に組まれた『ジビーフやい子×銀座レカン高良シェフ』です。果たしてそんな先まで真空パックで日持ちさせないジビーフは持つのか?

過去、何度かドライエイジングを試してみたのですが短期間で腐敗に走ってしまうので、今回も枝肉吊るしでギリギリまで水分を飛ばすことにしました。

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写真では分かりにくいのですが、肉の断面を指で触るだけで水分が付着するほどです。大阪の遊山さんで「食べる会」をやったときはこの状態でした。店主の安田さんがかなり悩まされたというだけあって一筋縄でいかないのがジビーフです。

とにかく毎日のように肉を見て、触って、話しかけながら状態を見ていきます。間違っても骨を抜いてしまったらそこで終わり、すぐ腐敗に向かっていきます。イベント開催日の11月12日に最高の状態に持っていくためには他の部位を同じ条件にして触って切って食べることを繰り返します。

 

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40日経過した『やい子』のリブロースです。ドライエイジングではないので黴の付き方が違うのですが、水分が多すぎるので表面が亀の甲羅のようにガシガシに硬くなってしまいます。食べられるのかと心配になりそうですが・・・

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カットするとこんな感じです。水分は完全に飛んでしまってねっとりとした濃い赤身です。触感は脾臓によく似ています(脾臓といっても分かりにくいと思いますが)

11月9日、高良シェフから届いたメッセージです。

——————————————-

ジビーフ&愛農ポーク到着してます‼

恐ろしい程の赤身
只今、格闘中です

そして、愛農ポーク‼
やはり美味しいです
しかし、謎の多い肉ですね
愛情が、ここまでの肉質を作り出すのか?

—————————————-

そして、11月12日。僕はいつも開始時間の60分前には到着してお店の周りをウロウロするのですが、銀座ということもあり、地に足がつかない感じでふわふわしながら結局はお店の中で1人待つことに。
そして19時、『ジビーフやい子×銀座レカン高良シェフ』のスタートです。

11月12日 銀座ロテスリー レカン 19時スタート
参加者:15名

 

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一品目は、「スジの煮こごりとクロケット」

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「ブラウンマッシュルームのポタージュ」

この一品は、8月いっぱいで移転のため閉店した「愛と胃袋」鈴木信作シェフのとっておきです。この日のためにレカンの厨房へ入っていただいたのでした。しかしおいしかった。さすが信作シェフです。

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僕の無茶ぶりを快く引き受けてくれた高良シェフ、そして学ぶためなら猪突猛進な信作シェフ、ほんとうに頭が下がります。

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参加者全員が騙されたのがこちら「愛農ナチュラルポークの骨付きロースト タイム風味のサラダ仕立て」ですが、皮付きと間違うほど表面をパリパリに仕立てていました。

脂身の所に層があります。焼いて縮んでますが、この層の脂身を倍の厚さ位にすいてあげてから、焼きましたパリパリです‼︎(高良シェフ)

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イチボのコンポートとコンソメスープ

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ランプのローストとイチボのシヴェ ロワイヤル風

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カーボンを纏ったロース肉のロースト

塩漬け5日、火入れ3日、竹炭とほうじ茶、小麦の粒、パンドカンパーニュ、きのこのパウダーで纏った物体は巨大な胡麻団子かと思うほど想像を遥かに超えたすばらしい味わいでした。

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レカンらしからぬカレーです。ジビーフのスジ肉を使ったカレーですが、肉の一欠けらも残さず使いたかったという高良シェフの愛情あふれる一品です。カレー専門店に申し訳ないくらいおいしかった。

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デザートは、「バニラ香るタルト・フランベ ハニートリュフと共に」

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プティフール キャフェ

ソムリエ宇佐美さんのマッチングもすばらしかった。

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この日の参加者の多くは、高良シェフと一緒にジビーフの里を訪れた面々。噛みしめるたびに風景が浮かびます。風のにおい、牧草の香り、そしてジビーフの躍動する姿が・・・

とにかく感動、そして感謝、なによりも高良シェフの想いが詰まった料理の数々でお腹はもちろん胸までいっぱいになりました。はっきり言ってジビーフは売れない肉です。格付けなんてC-1ですからね。だからこそ価値があると思っています。だれも見向きもしない肉だからこそ振り向かせてやりたい、そんな肉でありそんな想いです。西川奈緒子さんの想い、そして僕の想い、関わる方々の想いをすばらしい料理に仕立ててくれた高良シェフ、料理だけではなく人としてもすばらしい人格者であり日本が誇るトップシェフの料理に酔いしれた素敵な時間でした。

O

やはりこの人、マッキー牧元さんの感想です。

肉を食らうとはどういうことか? ジビーフはそれを問うてくる肉だった。完全放牧野生牛ジビーフを、キュイソンの達人、高良シェフが挑む。「カーボンを纏ったロース肉のロースト」は、一口噛んだ瞬間に「お前にこの味がわかるかい」と肉が聞いてきたようで、ぞくっとした。脂の甘さや肉の鉄分だけではない、味の交錯がある。草の香りや清涼な風に、牛の息や体臭が溶け込んだ、どっしりとした大地の味がする。そこには、噛んでも噛んでも味を表現できない神秘があって、人間の無力さを感じさせる。いや、同じ地球上の生物として互いに生き抜こうとする、呼びかけの味であったのかもしれない。
今まで食べた、どの肉のローストとも違った。茶や竹炭、カンパーニュ、小麦などで作られたカーボンが、牛を草原に戻したのかもしれない。高良シェフの肉を見極める慧眼と、類まれなる肉焼きのエスプリと、そしてなにより肉への深い敬意が、この味を生み出した。ゆっくりゆっくり咀嚼して目を瞑る。
肉がほぐれ、小さくなって喉に落ちていく。その瞬間僕らは、襟裳岬に近い駒谷牧場の草原に立っていた。

 

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