絶滅寸前のアルモリカン牛がパリ16区で公平が精肉にして伊藤シェフが料理するというスペシャルな食事会が開催されることになった
公開日:
:
2016/05/07
店・料理人
ブルターニュのTrè margat/トレマルガットに人口200人という小さな村にボラン農場はあります。ジャッキーとマサヨさんが営むボラン農場に初めて伺ったのが2014年11月でした。
私がフランスへ行ったときなんて在仏40年のマサヨさんに頼りっきりなのですが、そもそもは2012年にきたやま南山にて開催された「やまけんさんの育てた短角牛を食す会」に参加してくださったのがご縁でした。マサヨさんは絶滅寸前のアルモリカンという品種の牛を飼っているのですが、これが短角牛に似ているのです。そんなこともあってのイベント参加だったのです。
マサヨさんとのご縁はいまも続いているのですが、先日はパリのイブマリのところで修行中の公平がボラン農場を訪ねたというから縁とは不思議なものです。それだけでは終わらず、この縁はどこまで繋がるのかと驚くくらいの数珠つなぎっぷりをみせてくれています。
マサヨさんと16区のユーゴデノワイエへ行ったときのことです。ターブル・ドット(レストランよりも簡易的なイートインスペース)を併設する新しいスタイルの精肉店ということで前々から興味があり、事前にマサヨさんにアポをとってもらっていたのです。そのときにユーゴデノワイエで働いていたのが斎田武シェフでした(現在は恵比寿のユーゴデノワイエを任されています)
その斎田シェフと親しく会話していた日本人がいました。その方がこの6月にパリ16区で開業する伊藤シェフでした。伊藤シェフともこのときのご縁がいまも続いており、なんと公平が伊藤シェフの開業したてのお店でアルモリカン牛を捌いて伊藤シェフが料理するというイベントが行われることになったそうなのです。公平がしっかりご縁を引き継いでくれているようで不思議な感じですが、じつはもう1つご縁が繋がっているのです。
ユーゴデノワイエでマサヨさんと食事していたテーブルには、私たちの他にフランス人の男性3名と日本人のご夫婦が一緒でした。そのご夫婦ともご縁が続いているのです。
アルモリカン牛は、ジャッキーとマサヨさんがいなかったら間違いなく絶滅していたでしょう。先日、ピエール・オテイザさんとお会いしましたが、彼はフランスの地豚“バスク豚”を保護し、今では7000頭にまで復活させた第一人者です。いくらなんでもアルモリカン牛7000頭は無理がありますが、せっかく繋いだ命ですから、せめてフランス国内だけでもアルモリカン牛の存在を知ってほしいと思うのです。そのために日本人が奮闘するというのも、これまたなにかのご縁かなと、そんなふうに感じています。
マサヨさんもジビーフの奈緒子さんも畜産ビジネスとは程遠いところにいるような気がしますが、人の繋がりは贅沢な暮らしはできなくても心を豊かにし、ストレスなく好きなことを一生懸命できる環境に身を置かせてくれます。生産者から肉屋へ、そして料理人、食べ手へとつなぐ命のリレーは心の絆と信頼のリレーでもあると感じています。
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