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Le14e ル・キャトーズィエム茂野シェフとパリと熟成肉

公開日: : 2014/06/03 熟成肉

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数年前に私がお気に入りのワインバーで肉の会をやろうという話になり、(いま思えばこれが肉Meetsの前身だったのかも)で、問題はだれが肉を焼くのかということで、そのときにいただれかの知り合いに焼かせようということになった。連れてきたのは洋食のコックで本番の日に初めて会ったのだが、一目でダメだと直感した。やっちゃった的な雰囲気が漂っていたのとビッグマウスが私のタイプではなかった。案の定予感は的中した。しかもこの日用意した肉は、当時だれも知らなかった熟成肉だ。たっぷりと用意した3kgの熟成肉は、傷んでいるところを削ったとかいって1kg程度の塊になっていた。おいしい部分はすべてゴミ箱へ・・・あちゃちゃちゃ、、、です。

ワインバーのオーナーも私も落胆です。わざわざ楽しみに来てくださった参加者に申し訳ないということで、やめときゃいいのになぜかリベンジしようという話になってしまって、またまた「だれに焼いてもらうのか」という話になり、今度は失敗できないとばかりに紹介されたのが独立のために京都で物件探しをしていた茂野さんだったのです。

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そのときの写真ですが、会った瞬間に肉を焼けるオーラが漂っていました。どこで焼いてたの?という私の質問に、パリのル・セヴェロにいて休日はユーゴ・デノワイエさんの肉屋でお手伝いしていました。10年ほどパリにいて帰国してからは六本木の祥瑞にいました。・・・とのことだった。

ル・セヴェロもユーゴ・デノワイエも祥瑞も当時の私は知りませんでしたので、「あ、そうなんですか」という素っ気ない返事だったかも知れません。ただ、ドライエージングした熟成肉に関しては、当時(いまもそうだが)注目されているのはニューヨークですが、私の興味はパリでした。畜産大国といわれているフランスの牛肉事情にむかしから関心があったのです。

たちが知っている肉の焼き加減は、英語の「レア、ミディアム、ウェルダン」が通常かと思われます。細分化すると「レア」「ミディアム・レア」「ミディアム」「ミディアム・ウェルダン」「ウェルダン」になります。ちなみにフランス語だと、「ブルー」「セニャン」「ア・ポワン」「ジュスト・キュイ」「ヴィアン・キュイ」となります。

外食でステーキをオーダーして「焼き加減はいかがいたしましょうか」と聞かれた経験はだれしもあるかと思います。そしてほとんどの方は「ミディアムでお願いします」と答えるんじゃないでしょうか。つまり「普通に焼いてください」ってことです(笑)

私はフランスに行ったことはないのですが、いつだったかテレビでパリのステーキ屋が丸焦げの肉を出していたのが衝撃的でした。フライパンに油をたっぷり入れて揚げるように肉を焼いていたのです。これは理にかなっています。私が知ってる肉の焼き方は、肉の表面をカリッと焼いてからオーブンでじっくりローストするというものです。十分おいしくできるのですが難点は、このやり方ではどうしても旨味でもある肉汁が外にでてしまうのです。

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茂野さんが焼いた肉ですが、まさしくテレビで見たそのままでした。熟成肉の他にランイチも用意しておいたのですが、同様に揚げ焼きでビシッと焼き上げたのでした。

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茂野さんがパリで焼いていた肉を聞くと、リムーザン牛の経産だったそうで、水分を飛ばしてやらないと焼きだけではカバーできないとのことでした。てことは私の中ではドライエージングしかないわけです。枝肉の吊るしだと表面が乾燥するだけで中身の水分は溜まった状態になります。しかも真空パックしてしまうとドリップが大量にでてしまうのだ。ドリップが発生した肉は旨味成分が外部へ流出するので、カスカスの味気ない肉にしかならない。だからウェットエージングは熟成肉とは本来言えないと私は思っている。

私がこの日に用意した熟成肉は、近江牛の経産だった。このとき肉を触った茂野さんが発した言葉は「かなり引き伸ばしましたねー」だった。意味わかりますか?一瞬なんのことかなと思ったのですが、すぐに理解できました。

ニューヨークのドライエージングは14日程度で仕上げますがパリでは30日が通常だと聞いたことがありました。私が手がける熟成肉は40日を基本としていまして、このとき用意したものは参加者を驚かしてやろうと60日まで引き延ばした熟成ロースだったのです。それを茂野さんは肉を見て触っただけで分かったということは、パリでかなりの肉を触ってきたのだなと直感したのでした。

たっぷりの油とフライパンを傾けながら揚げるように焼くスタイルは、キャラメルの面をたくさん作ることがポイントです。外はカリッと中はフワッとした焼き上がりは、水分を飛ばした熟成肉にこそベストな焼き方だと思うのです。

ということで、いまさらながらパリへ行くことにしました。ドライエージングビーフの本場といわれているニューヨークには興味がないのですがパリへ行くならいまでしょう!(古っ)

その後、茂野さんは京都の河原町丸太町にLe14e ル・キャトーズィエムをオープンさせるのですが店はたったの5坪です。しかし、瞬く間に予約が取りにくい店となり、いまでは世界中からこの5坪の店に肉好きたちがやってくるのです。昨夜は久しぶりに訪問しましたが相変わらずご機嫌な肉に出会うことができました。

■熟成肉について

現在、熟成肉の在庫がゼロとなりました。卸、小売り、まったく販売できない状況です。来週末には仕上がるものがいくつかありますので、いましばらくお待ちくださいませ。今月は仕上がりが少なくて販売量も限られていますが、既存の取引先様はゆっくり売っていただけると助かります。

 

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