近江牛について

近江牛の特徴

近江牛とは

近江牛

近江牛は、約400年の歴史がある日本で最も歴史のあるブランド和牛です。
戦国時代には、豊臣秀吉が小田原城を攻めた際、秀吉側の武将、高山右近が蒲生氏郷や細川忠興らに牛肉を振る舞ったという史実が残っています。
『豊かな自然環境と水に恵まれた滋賀県内で最も長く飼育された黒毛和種』という定義の元、特許庁に牛肉の地域ブランドとして認められ、地域団体商標(文字商標)として、平成19年5月11日に登録されました。 <商標登録 第5044958号>
さて、そんな歴史ある近江牛も含めて、日本にはいったいどれぐらいの銘柄牛が存在するのかご存じでしょうか?
松阪牛や神戸牛といったメジャーなブランド和牛からあまり知られていない銘柄牛まで合わせますと、300以上はあると言われています。
そのなかでも、日本三大和牛と称されるのが、「近江牛」「松阪牛」「神戸牛」なのです。いわゆる高級肉の代名詞と言われていますが、その他では「米沢牛」や「前沢牛」などもよく知られている銘柄牛です。
では、近江牛と他の銘柄牛とは、いったいなにが違うのでしょうか?
ハッキリ申しまして、プロの方でも見た目だけではその違いは分かりません。例えば、近江牛と松阪牛、神戸牛を並べてピッタリ当てられる方はそうそういないでしょう。でも見た目では分からなくても、食べれば分かるという方はいるかも知れません。
似て非なる銘柄牛でも、最終的に選ばれるのは「味」なのです。



「究極の味と香り、味の芸術品」

日本三大和牛

近江牛のルーツは但馬産の黒毛和種です。じつは日本三大和牛と呼ばれている松阪牛・神戸牛も元をただせばルーツは同じなのです。
近江牛の特徴は、「肉質はきめ細かく、脂は甘くて、口の中でとろけるほどおいしい」と言われています。
霜降り度合いも高く、融点(脂が溶け出す温度)が低くいため、 胃もたれすることもなく、ある著名な方が「究極の味と香りが楽しめて、まさに味の芸術品といっても過言ではない」と言われたのも頷けます。
しかし、近江商人発祥の地でありながら、他のブランド和牛に比べてPRがまったくできていないのが現状です。県民性なのかも知れませんが、どうも目立つのが苦手なようです。もしかすると、近江牛に関わる人たちは昔も今も「おいしいものは宣伝しなくてもええんや!」なんて思っているのかも知れません。
自惚れているわけではありませんが、それだけ味に自信があるということではないでしょうか。
一般の消費者の方は、どうしても露出が多い(宣伝がうまい)牛肉に走りがちですが、実はプロの料理人にこそ評価を受けているのが近江牛なのです。
名店と呼ばれるレストランや有名シェフがメインの牛肉に近江牛を選ぶことは珍しくありません。

いわば近江牛は、料理のプロ御用達の牛肉なのです。


これは「味」を評価されてのことなのですが、実は選ばれる理由はこれだけではありません。他のブランド和牛と比較しても断然リーズナブルな価格なのです。
料理のプロたちは、味がよければ少々高くても触手を伸ばしますが、おいしくて買いやすい価格なら近江牛が選ばれて至極当たり前なのです。
「安くてうまい牛肉」は値段相応という意味ですが、「うまくて安い牛肉」はこんなにおいしいのに、こんな値段でいいの?という意味です。まさしく近江牛は「うまくて安い牛肉」なのです。




近江牛をめぐる歴史

近江牛は約400年の歴史をもつ日本で最も歴史のあるブランド和牛です。江戸時代からつづく長い歴史をご紹介します。

江戸時代

1590年 天正18年 豊臣秀吉の小田原攻略の折,高山右近が牛肉を蒲生氏郷と細川忠興に振る舞う
1687年 元禄年間 彦根藩で牛肉の味噌漬けを考案 「反本丸(へんぽんがん)」と称する
1771年 安永年間 彦根牛肉を諸侯に振る舞う
1781年 天明年間 彦根藩で牛肉の味噌漬けを将軍家斉に献上する
1788年 寛正年間 彦根藩で乾燥牛肉製法を始め、将軍家斉に献上する
1848年 嘉永年間 蒲生郡内において、尾州藩士の指導で牛の肥育がはじまる
1853年 安政年間 彦根魚屋町の勘治が、彦根牛の看板をあげ江戸で開業する
井伊直弼は殺生禁断のため水戸斉昭に恒例の牛肉献上を中止する
1866年 慶応年間 江州彦根産の牛肉が薬用として売られ「牛鍋屋」が開業される

明治時代

1869年 明治2年 県内から陸路で17~18日間を要し横浜まで牛を追い、外国人との直接取引が始まる
1877年 明治10年 逢坂、武佐、大町、豊郷、今津と場で日々50頭のと畜が行われる
1879年 明治12年 竹中久次が東京に進出し,牛肉卸売小売業「米久」を開業
江州産を中心に1日40頭と畜される
1882年 明治15年 神戸港から海運により牛を東京に出荷する
1884年 明治17年 四日市港から海運により牛を東京に出荷する
1887年 明治20年 と殺条例が制定。東京府下のと畜数は2万頭(産地別内訳は近江33%、摂津32%、播州11%、伊勢7%)
1890年 明治23年 前年の東海道本線開通により、八幡駅より牛の輸送が始まる
1892年 明治25年 朝鮮半島より牛疫が伝播し、生牛の輸送が禁止される
1907年 明治40年 近江牛育ての親の西居庄蔵翁が蒲生郡牛馬商組合を設立する
1910年 明治43年 家畜市場法の制定交付により県内家畜市場改組、草津、八日市、貴生川の市場整備される
1911年 明治44年 常設家畜市場開設される(草津・貴生川・湖東・八日市・瀬田・野洲・西押立・木之本)

大正・昭和・平成時代

1906年 大正3年 東京上野公園で全国家畜博覧会開催、蒲生郡の牛が優等1位となる
1932年 昭和6年 県立種畜場が野洲町市三宅に設置される
1935年 昭和10年 東京芝浦家畜市場の共進会で蒲生郡の牛が優等3位となる
1942年 昭和17年 役肉用種牝牛貸付規定により、和牛飼育を奨励する
1948年 昭和23年 滋賀県に畜産課が新設される
1951年 昭和26年 近江肉牛協会が設置される
1952年 昭和27年 近畿東海北陸連合肉牛共進会(第1回)が開催される
1954年 昭和29年 日本橋・白木屋で近江牛の大宣伝会が開催される
1959年 昭和34年 和牛生産団地育成事業、肉蓄団地設置事業等により肉用牛の生産を図る
1962年 昭和37年 滋賀県家畜商業協同組合が設立される
1966年 昭和41年 株式会社「滋賀食肉地方卸売市場」が設立される
1991年 平成3年 牛肉が輸入自由化となる
2005年 平成17年 「近江牛」の定義を統一
2007年 平成19年 滋賀食肉センター操業開始
2007年 平成19年 「近江牛」が地域団体商標に登録
2007年 平成19年 「近江牛」生産・流通推進協議会設立
2008年 平成20年 「近江牛」認証制度開始
2009年 平成21年 認定「近江牛」指定店舗登録制度開始


肉用牛について

生産農家は「繁殖農家」「肥育農家」「繁殖一貫農家」の3つにわかれます。

生産農家

滋賀県内の肉牛飼育農家は116戸あり、そのうち肥育農家が52戸、繁殖農家が9戸、繁殖から肥育まで一貫して行う、繁殖一貫農家が32戸あります。(2010年7月現在)



格付け」と「おいしさ」はイコールではないんです

テレビのグルメ番組などで、サシがビッシリ入った肉を「おおおお!」とかいってありがたがっているシーンをよくみかけます。レポーターも「やわらか~い!」「さすがA5!」というものばかりです。
ブランド和牛は、「A5」「雌牛」といった見た目で判断させるような謳い文句が多く使われています。
では、実際に良い評価を得た牛肉はおいしいのだろうか?
「A5」や「B4」とは(社)日本食肉格付協会による牛肉の格付けのことで、ABCが歩留まり等級といって一頭の牛からとれる肉の量で、1から5までの肉質等級というのがサシの入り方を指します。
現在の格付けでは、Aの5というのが最も上級の格付けとなるわけです。
しかし、格付けはあくまでも「見た目」の判断で評価するので、実際には「おいしさ」は考慮されていないのです。格付けは、あくまでも取引する目安なのです。

格付け

【歩留まり等級】
生体から皮、骨、内蔵などを取り去った肉を枝肉(えだにく)といいますが、生体から取れる枝肉の割合が大きいほど等級が高くなります。
【肉質等級】
「脂肪交雑」(いわゆる「しもふり」「さし」)の他に、「肉の光沢」「肉の締まり及びきめ」「脂肪の色沢と質」を加えた4項目を5段階で評価し、総合的な判定から肉質の等級が決定します。

 



サカエヤが取り扱う近江牛

信頼される肉屋を目指して

生産者さん

サカエヤは信頼される肉屋を目指して、流通経路を明確にし、私たちが「おいしい」と感じた商品だけを自信と責任をもって販売いたします。

当店では契約牧場からの直接仕入れと、滋賀県食肉市場で開催されるセリでの購入により、高品質な近江牛を仕入れることに成功しております。ブランド和牛に見られる高価格での販売でもなく、反対に過剰な割引やセールを常時行うこともしておりません。常に安心してお召し上がりいただける近江牛を安定してお届けするために、適正価格での販売をこころがけております。

また、美味しさだけでなく、どんな生産者がどのように育てたのか、生産者の人柄までもお伝えできる、安心・安全な近江牛をお届けする努力をしております。

あるとき、ふと思いました。
同じ近江牛でも生産者によってなぜこんなにも味が違うのか?
いったいどのような環境で、どのような飼料を食べさせているのか?
よく考えてみれば、生産者の名前は聞いたことあるが顔を知らない。

顔も知らない生産者が育てた牛肉を、自信を持って販売できるはずがありません。
近江牛の証明書や検査書のコピーを商品に付けただけで、「当店の商品は安全です」とアピールするのはなんか変だと思いますし、 「A5だからおいしい」とか、「雌牛だからおいしい」とか根拠のない理由で過大広告をうって販売することにも疑問を感じます。

当店ではスタッフをはじめ取引先様も牧場へ出向いて、作業をお手伝いしたり、生産者と交流を繰り返し、飼料や育て方などをきちんと把握したうえで、お客様に「おいしい食卓」をご提案させていただいております。



近江牛の流通経路 ~「生産者直結」による透明な流通経路による安全と安心~

サカエヤの流通

当店では、志の高い生産者を応援し、適正価格の取引を行っています。
牛を育てる現場は、まさに命のやりとりであり、生産者の苦労は計り知れないものがあります。
一生懸命に育てた牛が、少しでも高く売れることで、生活が安定し、飼育への意欲にもつながります。
「とにかく安く」と生産者に課すのではなく、手間をかけたものはそれに見合った価格で取引して、正当な評価を受けた生産者は、さらにすばらしい牛を育てる。そんな理想的な関係を構築し、よりよい商品をみなさまにお届けできることが願いであり、目指すところでもあります。

 

■市場を介さない“生産者直結型”の新しい流通システム

BSEにはじまり、口蹄疫、東日本大震災による放射性セシウムの問題など、畜産業界は多くの問題を抱えています。さらに、飼料や素牛の高騰なども含めると未来より明日の生活にも支障を来たす出来事ばかりです。サカエヤでは、畜産業界全体を見据えた活性化を目指し、これまでの不透明な流通システムではなく、独自のまったく新しい生産者と直結した取り組みにより、流通の一本化に成功しています。それにより、高品質で低価格の近江牛を消費者のみなさまに提供できる仕組みを構築しています。

 

■中間流通の省略により、高品質な近江牛を低価格で

サカエヤでは、契約牧場からの直接仕入れと、滋賀県食肉市場で開催されるセリでの購買により、高品質な近江牛を安く仕入れることに成功しています。
それにより、ブランド和牛に見られる高価格での販売ではなく、手の届く価格での販売を実現しています。おいしさだけではなく、どこのだれが育てたのか、さらに牧場の様子や生産者の人柄までもお伝えできる安全・安心への取り組みにより、近江牛の消費拡大、フードマイレージにも貢献しています。

 

■生産者との交流による相乗効果

生産者

生産者と販売者(精肉店や飲食店など)は、じつは直接会ったことがない場合がほとんどなのです。そこには複雑な流通経路が絡んでくるのですが、生産者は農協(現在は全農)に牛を出荷すればお役ごめん、あとはすべて農協がやってくれます。つまり生産者の仕事は、牛を育てて出荷するだけなのです。そこからは農協や問屋が価格を決めて精肉店などへ販売します。一番驚くべきところは、生産者は自分が丹精込めて育てた牛がいったいどこで販売されているのかを知らないケースがほとんどなのです。

サカエヤでは、2001年に起こったBSE問題をきっかけに生産者と交流を深めるようになりました。精肉のことは知っていても生きた牛のことはまったく知らない、それではお客様に納得できる商品説明ができないのではないか。そんなこともあり、プロ意識を高める意味でその頃から現在に至るまで定期的な牧場研修を行っています。日々のやりとりは365日かかしたことがありません。その結果、店舗スタッフは知識はもちろんのこと、商品を大切に扱うようになり、生産者はお客様からのメッセージからニーズを知り、双方の意識もかなり変化してきました。

 

■従業員満足度・生産者満足度・お客様満足度

サカエヤでは、「自分たちがお金を出してでも買いたいと思う商品だけを販売しよう。」が基本となっています。そのためには、流通経路が明確でなければいけません。問屋を介さない生産者直結の仕組みと、サカエヤの従業員が生産者と一緒になって汗を流すことで、自信と責任を持って自分たちが認めた近江牛をお客様におすすめできるのです。

サカエヤでは、生産者から安く買うのではなく「適正価格」での取引を行っています。そうすることで、生産者の生活は安定し、良い牛を育てる源となり意欲向上へ繋がるのです。

サカエヤと生産者の取り組みは、自然に配慮した「環境保全型畜産」として、フード・アクション・ニッポンアワードで優秀賞を受賞しました。これは牛にも人にも環境にもやさしい取り組みであり、今のグローバル社会にも当てはまる「もったいない」と同じです。「味」「価格」「取り組み」の三方に共感したいただければ幸いです。



「環境との共生」で農水省フード・アクション・ニッポンアワード優秀賞を受賞

牛

自給飼料による健全な家畜生産をテーマに、当店が応援している生産者のみなさんは、平成14年に近江牛粗飼料生産組合を設立しました。

はじまりは、産まれたときから出荷までをすべて自家産の飼料で近江牛を作りたいという願いからです。
メリットは、自家産の稲わらで給餌することによって、仕入れが発生しないだけではなく、すべてが把握できるということです。
牧場にとって大きな問題は、糞尿です。牛が増えればもちろん糞も増えます。

取組の1つとして、糞を田んぼに還元し、田んぼで飼料を作り、実った牧草を牛が食べるという資源の循環が行われています。このような取り組みにより、産まれてくる子牛はコスト低減することができ、安定生産にも繋がっております。また滋賀県のブランド米、「近江米」も牛糞の利用により化学肥料の低減に役立っております。

飼育に必要なワラ、牧草など、すべてが自家産で目の行き届く管理体制となっております。 このような地域の特徴を活かした地域産の飼料による飼育法こそ、自然との共存であり、環境保全型肉牛生産への取り組みなのです。

これらの取り組みは、農水省のフード・アクション・ニッポンアワードにおいて多大なる評価を受け、優秀賞を受賞させていただきました。



「近江牛のサカエヤ」ではなく、目指すのは「サカエヤの近江牛」

認定書

牛は血統や飼料、環境、水、生産者の技術や人柄などによって仕上がりが異なります。 牛が持つ能力を最大限に引き上げることが生産者の努力であり技術です。

近江牛といえども、すべておいしいかと言えば決してそうではありません。血統がよくても残念な結果になる牛もたくさんありますし、もちろんその逆もあります。出荷のタイミングを少し間違っただけでも求めている味とかけ離れることもあるのですから、仕入れ時に味を見極めるのは大変難しい事です。

そのため、当店では生産者を限定して味の均一化を図っています。日々の情報交換から飼料の選定、お客様からいただいた声をフィードバックして、問題が起これば立ち止まり、常に考え、おいしさの追求に取り組んでいます。

近江牛だからおいしいのではなく、「サカエヤが選んだ近江牛だからおいしい」と言っていただけることが私たちの願いであり、目指すところです。

 



認定「近江牛」指定店

高品質な近江牛を認証してお届けします



認定「近江牛」についての当店の考え方

食品の産地偽装などが相次ぐ中、全国ブランドの特産品「近江牛」を消費者に安心して買ってもらおうと滋賀県と近江牛生産・流通推進協議会が2008年に特に高品質な近江牛に「認定書」を付けて出荷する認証システムの運用を始めました。

当初は(株)サカエヤとして、認定「近江牛」の指定店登録は見合わせようかと考えておりました。理由はいくつかありまして、まず当店の取り組みは、生産者と共に作り上げていく近江牛であって、格付ではなく、どこのだれがどのような環境で育てたのかを重要視しているからです。

近江牛の定義は、「生まれてから出荷するまでのうち、県内で飼育期間が最も長い黒毛和種」とされています。そのなかで、認証されるのは、枝肉格付がA4、B4等級以上の高品質な近江牛に限られます。関東や県内を中心に年間約4000頭出荷されている「近江牛」の約70%の枝肉格付がA4、B4等級以上ということを考えるとこの認証を受けることができる確立も高く、「高品質近江牛」というお墨付きがもらえるわけです。しかし、私の考えは、血統こそ違えど、同じ生産者が同じ飼料をやり同じ環境で育てた近江牛は格付で評価されるよりも、味で評価されるべきだと思うのです。

先人たちが築き上げた近江牛ブランドをいとも簡単に切り崩して安売りしている他店を見かけます。そういった販売方法には疑問を覚えますが、それよりも生産者の一番近くにいる私たちだからこそ伝えられることがたくさんあります。

認定「近江牛」なら、なんでもいいというのではなく私が直接目利きして、そして納得のいく枝肉だけをおいしく精肉にしてみなさまの食卓にお届けさせていただくことが指定店としての責任であり、当店にしかできないことだと思っております。